第50章 新学期
そこへ、ルーピン先生が戻ってきた。みんなを見回した後、ふっと笑った。
「おやおや、チョコレートに毒なんか入れてないよ----おや、君は…さっきすれ違ったね」
ルーピン先生の目にミラが止まると、少し驚いたような顔を見せたが、すぐに柔らかい笑みに変わった。
「君も食べたほうが良さそうだ」
そういって、ポケットからチョコレートの包みを出して、最後の一欠片をミラに渡した。ミラは訝しげな顔を向けると、ルーピン先生は優しい声で「元気が出るよ」と言った。
「大丈夫だよ、ミラ」
と、青白い顔をしていたハリーはみるみる元気を取り戻し、いつもの顔色に戻っていた。ミラもルーピン先生からチョコレートを貰い、一口かじってみると、本当に手足の先まで一気に暖かさが広がった。
「あと十分でホグワーツに着く」と、ルーピン先生と言った。
列車がホグズミード駅に到着するまで、口数は少なかった。ミラも腕を組んで、静かに駅に到着するのを待った。到着して外に出ると、懐かしい声が聞こえてきた。ハグリッドが今年入る一年生をプラットホームの端で手招きしているのが見えた。
「おお、四人とも元気か----?」
と、ハグリッドが大声で呼びかけるも、周囲の人並みに押されて、手を振るのがやっとだった。その流れについて行き、凸凹のムカるんだ馬車道へと辿り着いた。そこには、馬がいない馬車がざっと百台ほど生徒達を待っていた。その内の空いている馬車に四人が乗り込んで扉を閉めると、馬車は独りでに動き出した。
馬車の中は微かにカビと藁の匂いがした。
ロンとハーマイオニーは、ハリーがまた気絶するんじゃないかと心配でしょっちゅうハリーを見ていることに、ハリーの横に座っていたミラが「うっとうしい」と一括した。