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【HP】怪鳥の子

第49章 吸魂鬼(ディメンター)


 ジニーと別れてから少しして、フレッドとジョージの声が聞こえた。近くのコンパートメントにいるのだとわかると、ミラは二人の名前を呼んだ。

「その声はミラかい?」
「僕達はここだよ」

 ミラは自分の声に気が付いてくれたフレッドとジョージの声のする方へ歩いて行くと、扉から様子を伺っている双子を見つけた。

「何があったかわかる?こっちは一番後ろから来たんだけど、特に何もなくて」
「俺達もまだ何もわからないんだ。すぐに動くと思ったんだが、一体前で何があったんだ?」
「とりあえず中に入ったほうがいい。誰かとぶつかるぞ」

 ミラはまだ先に進もうか悩んだが、ハリー達に心配をかけるのは良くないと思い、コンパートメントの中に入った。中にはもう一人、リー・ジョーダンがすぐに挨拶をしてくれた。ミラが窓際の席に腰掛けようとした時、誰かの叫び声が聞こえてきた。ドタドタとまるで必死に何かから逃げるような足音ともに、ミラは席につかずに開けっ放しの扉を見つめた。

 入り口近くに立っていた双子も緊張した様子で、列車の前から誰かが走ってくるのを覗いていた----その時、悲鳴を上げながら誰かがコンパートメントに入ってきた。余程錯乱しているのか、真っ暗闇の中誰かがミラに突っ込んできた。突然のことにミラはぶつかってきた人物に押されて窓へ押し付けられた。

「うわあああああああああ!!!!!ディメンター(吸魂鬼)だ!!!!!!」
「ううっ!」

 自分を窓に押し付けてくる人物の後ろに更に人がいるのか、ミラは腕の一本も動かせなかった。苦しさの余り、魔法を使おうかと思ったその時だった----天井まで届きそうな背の高い、マントを着た何かがコンパートメントの中を覗き込むようにして頭を突き出したのが、雷の光でほんの一瞬見えた。

 ゾッとするような冷気を感じると、騒いでいた誰かも感じ取ったのか、息を潜めて震えていた。コンパートメントの中がまるで冷凍庫になっかたのような気がした。寒気が肌に刺さり、不快な気持ちがいっぱい込み上げてきた。ミス・メアリーから受けた罵詈雑言や暴力が嫌でも脳裏に浮かび上がり、ミラは目を閉じて思い出さないように目を硬く閉じたがなんの意味もなかった。
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