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【HP】怪鳥の子

第49章 吸魂鬼(ディメンター)


(この出来損ない!こんな簡単な料理も作れないのかい!?)

 うるさい!と、ミラは勝手に思い起こされる思い出に心の中で叫びたくなった。

(どこの孤児院もアンタみたいな気味が悪い子供を受け入れたくないからここに居させてやってるんだよ。少しは感謝でもするんだね)

 こっちも好きでここにいるんじゃない!と、怒りが湧き上がってきた。

(なんでアンタはいつもいつも問題を起こすんだい!!学校から連絡があったよ、男の子達を全員に怪我させたって!)

 向こうから喧嘩を売ってきたんだ!私だって無傷じゃない!と、もうないはずの怪我をしたところが痛くなったような気がした。嫌な思い出の渦に飲み込まれるような、怒りと憎しみで心が埋め尽くされるようだった。
 今にも破裂してしまいそうな風船のように、ミラは必死に抑え込んだ。コンパートメントの中はガタガタ、ギシギシと嫌な音を立てて揺れていた。ぬるりと、鼻から水が垂れていく感覚があった。

「うぅ…」

 


 誰も声一つ出せないでいた。嫌な緊張状態が永遠と続くような感覚がした後、それはゆっくりとなくなっていった。冷蔵庫みたいに冷えた部屋が時間をかけてゆっくりと室温が戻っていった。頭の中に響いていた声も聞こえなくなり、ミラはやっとホッと息をついて体の力を抜くことができた。



「----行ったか?」

 誰かがやっと声にするまで、誰も口を開こうとはしなかった。自分を窓に押し付けていた人物をミラは確認すると、暗くて顔は見えないが、すっかり縮み上がってミラの首元に顔を押し付けてほとんどしがみつかれていた。
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