第49章 吸魂鬼(ディメンター)
ミラは三人が話し合っている会話に入らず、自分の足元を見ていた。今になってハリーに罪悪感が湧いて来たのだった。何故なら、自分は正規の手続きではなく、ドラコの力を借り、孤児院の一人であるマグルの女の子を脅して手に入れたものだ。どんな手を使ってもいいと思ってはいたものの、ハリーがホグズミードに行けないことを知ると、その気持ちが心臓に棘になって突き刺さったような気がした。どうして先にハリーに聞かなかったのだろう、もし知っていれば、自分も許可証にサインをもらえなかったと嘘をつけたのに----。
ホグワーツ特急は順調に北へ進み、外の雲はどんどん厚くなり、車窓にはますます暗く荒れ果てた風景が広がり、コンパートメントの外側の通路では、生徒たちが追いかけっこをしながら行ったり来たりしていた。いつの間にかハーマイオニーはクルックシャンクスをカゴから出していてロンは少し不機嫌そうだった。
その後、午後一時になった頃に丸っこい体型の魔女が食べ物を積んだカートを押して、コンパートメントのドアの前にやってきた。四人はルーピン先生を起こすべきか悩んだが、ハーマイオニーが声をかけた。しかし、リーピン先生の眠りは深いのか、全く起きる気配がなかった。魔女は一番前の運転士のところにいると教えてくれた。ハリーが『魔女大鍋ケーキ』を一山買い、ミラもお菓子をいくつか購入した。
また暫くすると、無遠慮にコンパートメントのドアが開けられた。やって来たのは、せせら笑いを浮かべたドラコと、その両脇にクラッブとゴイルが立っていた。ミラはやれやれと思いながら、成り行きを見守ることにした。どうもドラコはハリーやロンに何か言ってやられないと気が済まないことはわかっていたし、もし何かあれば----できれば嫌味だけ言ってさっさと立ち去ってほしいとミラは思った。ここにいるドラコ以外が、二人の秘密の関係を知らないのだ。安易に友達になろうと言ったわけじゃない、ハリー、ロン、そしてハーマイオニーに危害を加えようならもちろんドラコに容赦しない。
それでも、なるべくドラコとは荒波を立てたくないと思ってしまうのは、少しドラコのことを知りすぎたせいなのかもしれない。