第49章 吸魂鬼(ディメンター)
「そうだよ、ミラ。いつも怪我ばかりしてるのは君だ----僕、君がシリウス・ブラックに向かっていくんじゃないかって心配なんだ」
ハリーも不安げな顔をしていた。
「ハリーも人のこと言えないだろ…それに、親友の命が狙われてるって時に怖気付いてなんかいられないよ」
と、ミラは納得のいかない顔で言った。
「相手はハリーを殺そうとしてる狂人だぜ。二人が自分からのこのこ会いに行くバカがいるかい?」
ロンは青白い顔をして震えていた。
「ブラックがどうやってアズカバンから逃げたのか、誰にもわからない----あそこは、これまで誰一人脱獄した奴なんかいない。しかも、ブラックは一番厳しい監視を受けていたんだ」
「だけど、また捕まるでしょう?だって、マグルまで総動員してブラックを追跡しているもの」
と、ハーマイオニーが力を込めて言った。
「マグルに何ができるっていうんだ、できても通報ぐらいさ。それに、アイツの手先って言うんなら、そう簡単には捕まらないと思うけどな」
ミラがそういうと、三人は黙ってしまった。
静かになったコンパートメントに、小さく口笛を吹くような音が僅かにどこからか聞こえてきた。それは、ハリーのトランクの中に閉まってあったスニーコスコープ(携帯撹乱防止器)が鳴っていた。ロンは立ち上がって荷物棚に手を伸ばしてハリーのトランクを下ろした。ロンはハリーのトランクからスニーコスコープを引っ張り出すと、手のひらで激しく回転して、眩しいほど輝いていた。
ハーマイオニーが興味ありげにロンに質問していると、スニーコスコープは耳がつんざく様な音を出していた。
「早くトランクに戻して、この人が起きちゃうよ」
ハリーはルーピン先生の方を見ながら言った。ロンはスニーコスコープをバーノン伯父さんのお古のくたびれた靴下の中に押し込んで音を殺し、その上からトランクの蓋を閉めた。