第48章 内緒のアイスクリーム
「お前、ここで何してるんだ?」
ドラコの声には驚きと少しの警戒が混じっていたが、ミラだとわかるとドラコはチラリと店の奥を確認した後、ミラの元へ歩いてきた。
「散歩してたら二人を見かけただけ。で、ノクターン横丁の帰り?」
「あんなところ、いつも行くわけないだろ」
「残念。せっかく案内してもらおうと思ったのに」と、ミラはいらずらっぽい笑みを浮かべると、ドラコは不機嫌そうな顔をした。
「それで----君の父上は?」
「奥だ。ここの店主と話しをしている。先日一緒に届いた怪物みたいな本のおかげで、他の本も台無しになってね。あんな役立たずの本、誰が考えたんだ?作る方もだが、それを生徒にまで与える教師も頭がイカれているとしか思えない。まともに授業を受けられるか分かったもんじゃない」
ミラはやはりあの時包みを開けなくてよかったと思った。「それは大変だったな…」とだけ言って、プレゼントで送ってきてくれたハグリットのことは言わなかった。ドラコにハグリッドのことを言えば、よくないことばかり言うのは分かっていたからだ。
「別に本を買い直すことぐらい簡単だが、こんなことが二度と怒らないよう父上が店主と話しているだろうさ」
ミラは店の奥でルシウスが店主を脅しているのではと想像したが、それもあえて口に出さないようにした。家族のことを貶すと、ドラコが怒ることは間違いないとミラは覚えていた。
「話しはどれくらいで終わりそう?」
「さぁ…そう長くはないと思う」
「じゃあどっか行かないか?話したいことがあるんだ」
「なんでお前と…」と、ドラコは呟いたが、一瞬考え込み「ここで待っていろ」と、言って店の奥へ行ってしまった。数分もしないうちに、ドラコ一人が戻ってきた。
「少しだけならいいと父上が言ってくれた。行くぞ」
ドラコはミラを追い越して店の外へ向かった。ミラもそれに続いて外に出ると、外は暑く、日はもうすぐ真上につきそうだった。ドラコの隣りに並ぶと、ドラコはどこへ行こうかと辺りを見回していた。