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【HP】怪鳥の子

第47章 擬態紙


 もうすぐ消灯の時間が迫ってきた時、控えめなノックが聞こえた。ミラは静かに扉の前まで来てドアを開けると、顔色の優れないヒルダがいた。

「----例のものは?」

 ミラは冷たく尋ねると、ヒルダは震えながら紙をミラに手渡した。ミラは紙を広げて、ミス・メアリーのサインがあるかしっかり確認した後、ヒルダの人形を返してあげた。ヒルダは戻ってきた人形を掻き抱いて、自分の部屋へ走って行ってしまった。啜り泣くような声も聞こえた。

 もう二度と関わりたくないと思えばいいと、ミラは暗い廊下に消えたヒルダを見て思った。やられたら倍でやり返すのがミラのやり方だった。



 ドラコからもらった紙を取ると、ホグズミード村の許可証にはしっかりとサインがされていた。ミラは細く笑むと、無くさないように古い教科書にそれを挟んだ。杖をズボンのポケットに突っ込み、トランクを閉め、フクロウの籠を掴み、扉を少しだけ開けて外を伺った。時刻は消灯時間に近く、ミス・メアリーがミラの部屋に鍵をかけにやって来る。静かに部屋を出ると、慎重にトランクを引っ張って階段を降りていく。

 ミラにとってもう孤児院にようはなかったが、ミス・メアリーはミラがホグワーツに戻るまで掃除や食事などの仕事を、ミラにやらせたがった。ホグワーツに通うまでは、夏休みであろうが無かろうが、ずっと働かされていた。夏休みを最後まで残れば、どうなるかぐらいミラには容易に想像できた。

 やっと階段の最下層に着くと、足音が聞こえてきた。ミラは急いで階段裏に回ると、物でいっぱいのところへトランクとフクロウの籠を押し込み、ミラ自身もなんとか体を捻じ込んでジッと息を潜めて待った。まもなくして、ミス・メアリーがやって来た。階段を上がっていくのを音で確認しながら待っていると、二階に辿り着いたのを聞いて、ミラは音を立てないように、それでも早くトランクと籠を引っ掴んで食堂のキッチンへ向かった。

 裏手口の鍵を開けると、少し湿った夏の夜風が入り込んで、ミラの顔を優しく撫でた。すると、ミス・メアリーの怒鳴り声が聞こえ、ミラはニヤリと笑った。


「それじゃ、来年の夏にまた」
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