第47章 擬態紙
「私、怖くないわ!ミス・メアリーもあの子のこと追い出したがってたし、何かあればミス・メアリーがなんとかしてくれるわ!」
「でも、あの子…ちょっと変わってるの……窓とか割れたり、急に停電が起こったり…」
女の子たちは前に起こったことを思い出したのか、暗い顔で黙り込んでしまった。
夕食が終わった後、ヒルダは友達たちと部屋に向かった。たわいもない話をし、お互いの部屋に入る前に挨拶をして扉を閉めた。
「みんな怖がりすぎよ、あんな顔がちょっといいだけの子。あーあ、早くどっかに行ってくれないかしら」
部屋の明かりをつけると、誰かが部屋の椅子に座っているのが見え、ヒルダはヒュッと息を詰めた。明かりをつけるまで、一切の人の気配は感じなかった。いきなり現れたミラに、ヒルダは情けない声を出した、その場に座り込んだ。
「な、な、何、何して…!」
心臓にかなり負担をかけてしまったのか、ヒルダは驚きでパニックを起こしているように見えたが、ミラは床に座り込んでいるヒルダを見下げた。
「返してもらいに来た。アンタが私のブラシを盗んだのはわかってる」
「何言って…誰がアンタの物なんか…!」
「…白状しないなら…」
ミラは後ろ手に隠していた人形をヒルダの前に持って見せた。
すると、その人形を見たヒルダの顔色はどんどん悪くなり、首を横に振り出した。ミラは人形の顔と、体を両手で掴むと、左右にゆっくりと引っ張った。
「やめて!!」
ヒルダは声を上げたが、ミラは無表情で人形を引っ張り続けた。人形の首辺りからブチブチと糸が切れる嫌な音が聞こえ、ヒルダはパニックになって飛びかかってきた。
「返して!」
ミラは突っ込んできたヒルダをかわすと、さらに人形を引っ張って見せた。
「やめて!やめて!!それは死んだお母さんがくれたものよ!」
「じゃあ私のブラシを返して」
ヒルダはミラに言われた通り、机の引き出しからブラシを取り出して見せた。
「そこにおいて」と、ミラは顎でベッドを指すと、ヒルダは恐る恐るブラシをベッドに置いた。
「ねぇ…ブラシは返したわ…ちょっとからかっただけじゃない…」