第47章 擬態紙
ミラはハリーの手紙を何回も読み直して、やっと落ち着いた頃にベッドに力なく座った。ハリーが家を飛び出すようなことがダーズリー家で起こるということは、今回は相当ハリーは何かに反発、または激怒するような何かが起こったのだと、ミラは容易に思いついた。実際、ミラは何度ここを飛び出したいと考えたことか。
でも、ハリーが無事に漏れ鍋にいることにミラは安心した。そうとなれば、自分もここに長居することもない。さっさとサインを取り、自分も抜け出そうと考えた。ハリーの手紙をトランクに仕舞うと、ミラは小さなテーブルに置かれたヘアブラシで髪の毛を梳かした。髪は伸び、後ろの髪はもう肩を追い越して肩甲骨に届いていたし、前髪も目を覆うくらいには伸びていた。
ブラシを机の上に置いて、ミラは灯を消して寝床に入った。
さらに二日後、ミラはもうミス・メアリーの部屋に忍び込んで、書類を紛れさせるしかないと考えていた時だった。珍しく何もない午後、部屋に戻った時に、いつも机の上に置いてあったヘアブラシがなくなっていることに気が付いた。
トランクの中や部屋中を探してもなく、ミラは焦りを覚えた。すぐに部屋を出て、すれ違う孤児院の子供たちを観察していると、子供たちはびっくりしてミラを避けるようにして道を開けた。前から一緒にいる孤児院の子供たちは、ミラが前の学校で喧嘩をしているを知っているので、関わりたくないといつも思っていた。その上目の色も違い、ミス・メアリーが見せるミラへの態度が、子供たちにも伝染していた。
ミラは犯人が誰か、考えなくてもわかっていた。念の為いろんな子供を確認しているが、他の子供たちが自分と関わりたくないことはもうずっと前から知っている。ただ一人、ヒルダだけが新しくここにやって来て、ミラのことを理解していないのだ。
院内を探し回っていると、ヒルダは他の女の子たちと食堂に集まって話していた。そこへ真っ直ぐ進んでいくと、ミラに気が付いた他の子供が、突然笑うのをやめてコソコソと周りに話し出した。みんな一斉にミラの方を見ると、ヒルダだけが偉そうな顔で他は青ざめて口を閉じた。