第47章 擬態紙
それから数日後、やっと部屋から出してもらえた。食事は毎朝一食の粗末な物だけ、トイレは一日数回だけは行けたものの、シャワーを浴びさせてもらえなかったせいで、髪は油っぽく、体も汗臭くなっていた。やっと部屋から出てきたミラを、ヒルダが指をさして笑っていた。
ハリーのところはペチュニアおばさんが綺麗好きなので、数日もシャワーを浴びてないと聞いたら即答してしまうだろう。
トランクに隠していたお菓子のおかげで飢えは凌げたが、だいぶ減ってしまったことにミラはため息を吐いた。おかげで宿題は進んだが、食料はこれからキチンと管理しなけばすぐに底をついてしまうことは明白だった。ハーマイオニーに手紙を送ることも考えたが、せっかくの休暇中に水を刺したくなかったし、何よりこの現状を知られたく無いとも思った。
さらにミラをうんざりさせたのが、庭の草だった。たった数日部屋に軟禁されていただけなのに、庭の草はまたボーボーに伸びていた。管理する気がないなら、除草剤を撒けと悪態をつきながら、ミラはまた延々と草むしりを再開した。
七月三十一日の夜、ハリーへの誕生日のカードをノクチュアに送らせると、別のフクロウがホグワーツから手紙を届けてくれた。手紙はいつもより分厚いことに気が付くと、ミラは封を切った。手紙にはいつも通り学校が九月一日に始まることと、三年生は週末に何回かホグズミード村に行けることが書かれていた。しかし、それには同封された同意署名の紙に、両親又は保護者のサインが必要だとも書かれており、ミラは顔を歪ませた。ミス・メアリーが素直にミラの紙にサインをしてくれるだろうか?いや、それはない。あの意地悪な人のことだ、これまで以上に仕事を押し付けられるか、ミラに頭を下げさせてくるに違いない。
頭を下げて媚びへつらうくらいなら、諦めた方がまだマシだとミラは思い、来学期に揃えなければならない教科書などのリストに目を通した。
しかし、週末みんなとホグズミード村に行けたら、どんなに楽しいだろう----上級生たちから村全体が魔法の村だということは聞いていたが、そんなチャンス、きっと自分には----ミラはハッと思い出したように、慌ててベッドの下に押し込んであるトランクを引っ張り出した。