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【HP】怪鳥の子

第47章 擬態紙


 その日の晩御飯はなかった。ヒルダがミス・メアリーに告げ口をしたなんて、考えなくてもわかる。草むしりを途中で放り出して部屋に篭っていたミラのところへ、ミス・メアリーが唾を飛ばして怒鳴り散らして来た。せっかく落ち着こうと部屋に戻って来たのに、イライラが収まることがなかった。増えるのは、ミス・メアリーに対する憎悪だけだった。

 ミス・メアリーから隠すように両手を後ろ回して手首をもう一つの手を掴んでおかないと、今すぐにでも魔法で吹き飛ばしてやりたい衝動を抑えられるような気がしなかった。クルーシオ。クルーシオ。トムがまるですぐ隣で囁いているような、磔の呪文が頭の中で響いた。

 それを必死にダメだと、ミラは眉間に顔を皺を寄せて耐えていた。ミス・メアリーの罵倒が早く終われと思っていると、左の頬に突然衝撃を受けた。じんわりと熱が後からやってくると、平手打ちをされたことに気が付いた。


「人が話してる時に無視するなんて!アンタんとこの学校の教育はどうなってるんだい!あのマクなんとかって先生は、ちゃんとアンタを教育してるんだろうね?え?仕事も来ないせない上に他の子供に手を出すなんて、この出来損ない!ここにおいてやってるってこと、忘れるんじゃないよ!」

 ミラはジロリとミス・メアリーを睨みあげて声をあげた。

「マクゴナガル先生はたくさんの生徒から尊敬される先生だ!侮辱は許さない!」

 ミラは今にもミス・メアリーに飛びかかりそうな顔で唸った。どうしてもマクゴナガル先生の侮辱だけは許せなかった。ミス・メアリーもまさかミラが反論してくるとは思わず、驚いた様子をしていた。

「っ…その気持ち悪い目を向けるんじゃないよっ!」

 バチンと、今度は右の頬を叩かれた。

「随分反抗的になって…アンタなんか、その気になれば追い出せるんだよ!」

 乱暴にドアを閉めて出て行ったミス・メアリーは、扉の外についている複数の鍵に施錠して、足音うるさく鳴らして去っていった。

「チッ…クソババアが」

 ミラは熱を持った両の頬の痛みに耐えながら乱暴にベッドに腰掛けた。出て行けるのなら、とうの昔に出て行っている。ここにいるのはハリーのためだ。どんなにハリーと一緒にここを向け出したいか、もう何千回も何万回考えたことだろう。
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