第46章 憎しみの芽【アズカバンの囚人編】
ハリーの誕生日を迎えた七月最後の日、ミラは真夏の日差しを浴びながら孤児院の敷地内の草むしりをしていた。茹だる暑さに耐えながら、十日前に切ったばかりの草をまた刈っていく。どうしてこの孤児院位は芝刈り機が無いのだろう苛立っていると、聞きたくない声が耳に響いて頭痛がした。
「まだこんなとこで草むしりしているの?どうせ、見てないところでサボってたんでしょ!」
ヒルダは日に当たらない影の中で、意地悪顔をしてアイスクリームを食べていた。ミラは聞こえないフリをして草むしりを続けた。
「アンタってほーんとうにトロい。そんなんじゃ、今日中に終わらないんじゃない?ミス・メアリーに、アンタが草むしりサボってたって言いつけちゃおうかな」
ミラが掃除をしていると、ヒルダはどこからともなく現れて嫌味をぶつけてくる。ミラはそれをずっと無視してきたが、暑い日差しのせいで余計にイライラする要因となった。
「ねぇ、聞いてるの!」
ヒルダの喚く声が一際大きくなるが、ミラは無視し続けた。ヒルダを相手にする時間すら惜しいとさえ思っていた。こんなくだらない草むしりをさっさと終わらせたいとヒルダを無視し続けていると、左肩に痛みが走り、ミラはそのまま横倒しに倒れた。
ミラは体を起こしてヒルダを見上げると、片足を上げた状態のヒルダが良い君だと言った顔でミラを見下ろしていた。蹴られたのだと理解するとスッと頭が冷えていく。ミラは立ち上がりヒルダを睨みつけると、ヒルダはようやくミラが自分を視界に入れた事に満足しているようだった。
「てっきり眠ってると思ってたの。でも、起きてたのね」
豚が何か喚いている----ミラは、ヒルダにタックルをかました。ヒルダの持っていたアイスクリームは手を離れて、ベチャリと芝生にめり込むように落ち、二人は芝生の上に倒れ込んだ。ミラはヒルダに馬乗りになって首元の服を掴んで持ち上げた。
「呪い殺すぞ、豚野郎」