第46章 憎しみの芽【アズカバンの囚人編】
苦しめてやりたい、とミラは怯えて自分を見上げるヒルダを見て思った。去年図書室で借りた『最も強力な魔法薬』に書かれていた毒薬を飲ませてやろうか、顔をオデキだらけにしようか、それともナメクジを吐き出させようか、それとも----。
『一つ、いい魔法を君に教えてあげよう。この呪文は僕のお気に入りの一つでね----クルーシオ(苦しめ)』
突然、トム・リドルに言われたことが頭の中に思い浮かんだ。
『『許されざる呪文』の一つ、磔の呪文だ。この呪いを受けた者は、死んだ方がマシだと思う苦痛を与えられる----君が憎んでいるマグルの院長に使うといい』
ミラは乱暴にヒルダの服を離すと、立ち上がって睨み付けた。
「さっさと消えろ!」
情けない声をあげて、ヒルダは一目散に逃げていった。ミラは大きなため息を吐いて、その場にしゃがみ込んだ。頭に浮かんだトムの言葉がこびりついているようで吐き気がした----私は、ヒルダを呪い殺したかったのだろうか?と、冷静になった頭で自問自答した。
『殺してやりたいほど憎んでいるだろう、ミラ。断言できる、君はいつかこの呪文を使うってね』
----違う。私は絶対にこの呪文を使わない。自分のために他人の命を奪うような、ハリーの両親を殺した殺人鬼なんかと一緒になりたくない。
とても草むしりをする気分などなく、ミラは自室へ戻る事にした。
その日の夜、嬉しそうなトムを夢で見たミラは、今までで一番最悪な悪夢だと思った。