第44章 死の覚悟
「記憶が戻ったのに、まだ僕に歯向かうのか?」
「むしろもっとムカついた」
ジニーを『継承者』にして、一生消えることのない傷をつけた。
自分の侵した罪をハグリッドに擦りつけて、学校を退学させた。
自分の危険をわかっていて助けようとしてくれたドラコから、記憶を奪って消し去ってしまった。
大事な親友を石にされた。
『継承者』じゃないのかと、ハリーは学校中の生徒に疑われて大変な思いをさせた。
「不利ってわかってて喧嘩をやめるなんてこと、私にはできない」
「…君はもう少し、賢いと思っていた----けど」
残念だ、とトムはガッカリした様子を見せたが、また余裕のある笑みを浮かべた。
すると、倒れていたジニーが上体を起こして、上衣のポケットをあさりだした。杖を取り出すと、それをトムに放り投げて渡すと、また意識を失って倒れた。
「退屈しのぎにはなりそうだ」
トムも杖を構えると、ミラは立ち上がった。トムからは目を離さず、ジニーから離れると、ちょうど向かい合う位置で立ち止まってすうっと息を吸った。
「そのムカつく顔、ぶん殴ってやる」
「愚かな小娘だ」
余裕の表情を崩さないトムに、先制を仕掛けたのはミラからだった。
「デパルソ!」
吹き飛ばし呪文を唱えると、呪文はトムに向かって素早く飛んでいった。トムはジニーの杖を軽く振ると、バシッと大きな音をたてて消えてしまった。
「エクスペリアームス!インセンディオ!エンゴージオ!----」
ただ思いつくままに呪文を唱えた。前回の戦いでデパルソを連続で使っても、トムには余裕で呪文を弾かれることはわかっている。魔法の知識も技量も、遥かに向こうが上なのも理解している----元に、未だに呪文の一つもトムに当たりもしない。
「ペトリフィカス----ップロテゴ!!」
赤い光線が飛んできたのを、ミラは咄嗟に防御呪文を唱えて回避した。次々と飛ばされる赤い光線に、ミラは何度も「プロテゴ」と叫んで防いだ。呪文が間に合わない時は、慌ててその場から飛び退いて避けることに成功した。