第44章 死の覚悟

「ハァ、ハァ、ハァ…」
「悪くない－－－－でも、まだまだ実践が足りていないな」

　また赤い光線が飛んでくると、ミラは防御呪文で防いだ。

「いいのかい？そんなに防御ばかりに集中して」

　防ぐのに精一杯だと思っていると、避けきれなかった呪文に当たり、ミラは吹き飛ばされて地面をゴロゴロと転がった。すぐに起き上がって構えると、次の呪文がミラを狙っていた。慌てて転がって避けると、起き上がった場所に呪文が当たり、黒い跡が残った。

「この間のように、呪文にもっと力をこめないのか？あの時の君の方が、まだマシだったよ」
「っ…デパルソ！！」
「それとも、また魔力切れで僕に操られることを心配しているのか？」
「エクスペリアームス！」
「一つ、いい魔法を君に教えてあげよう。この呪文は僕のお気に入りの一つでね－－－－クルーシオ（苦しめ）」

　赤色の光線ではなく、緑色の光線ミラに向かって放たれた。邪悪な笑みを浮かべているトムに、ミラはゾワッと身体中に鳥肌が立ち、防御呪文も唱えずに素早く飛び退いた。この呪文に当たってはいけないと、直感が告げていた。

「何、その呪文…」

　明らかに普通の魔法じゃない。何故なら、今まで緑色に光る魔法を見たことがないからだ。

「『許されざる呪文』の一つ、磔の呪文だ。この呪いを受けた者は、死んだ方がマシだと思う苦痛を与えられる－－－－君が憎んでいるマグルの院長に使うといい」
「何を、言って…」
「殺してやりたいほど憎んでいるだろう、ミラ。断言できる、君はいつかこの呪文を使うってね」
「っ…何、分かったこと言って…！」

　カッと頭に血が上り、ミラは乱暴に杖を振った。しかし、それも最も簡単にトムに弾かれてしまった。

「今のは魔力が篭ってた。動揺してるな」
「っ…」

　少しでも力を抜くと、体が震えそうだった。唇を噛んで、なんとか冷静になれと落ち着かせようとしても、トムに勝てる算段が浮かばなかった。何か、何かいい解決策はないかと模索した。こうしている間にも、ジニーは段々弱っていっている。早く決着をつけなければと思うほど、ミラを焦らせた。
　チラッとジニーを確認した時、ミラはジニーのすぐ側に落ちている物に気が付いた。