第43章 秘密の部屋へ
「君は覚えていないけど、この日記を毎日書き込むように仕向けてあった。君を操れないないのは、魔力が多いだけじゃない。誰も信用してないからだ。いくら周りを欺いても、僕にはわかる」
ドラコは悲鳴をあげることも忘れるくらい、目の前の光景に震えあがった。
逃げようと、一歩足を後ろへ引いた時、シューシューと、不気味な音が聞こえた。それも遠くからではなく、かなり近くからだ。ドラコは、自分の後ろに一体何がいるのだろうと振り返ろうとした。
「見るなっ!目を瞑れっ!」
ミラが喚いた。後ろを振り向きかけたドラコは、ミラがなぜ突然叫んだのか訳が分からなかったが、ギュッと目を閉じた。
「見たら…死ぬ----『秘密の部屋』の、怪物は…バジリスクだ!」
今にも意識が飛びそうになるのを堪えて、自分たちの後ろにいるバジリスクがドラコの目に触れないように叫ぶしかなかった。ジニーは、まさかミラの口からバジリスクの名前が出るとは思わず、少しだけ目を大きく開いたが、すぐにいつも通りに戻った。
「そこまで突き止めるなんて大したものだ。侮っていたが、もしかして、『秘密の部屋』の入り口もわかったのか?----それは後で聞くとして、お喋りはこのくらいにしよう。部屋もバジリスクの存在も知られたら困るんでね」
ミラは頭痛の痛みを我慢して、なんとか目を開けてジニーを見ると、ぼやけた視界にジニーがドラコに杖を向けているのが見えた。ドッドッドッと、心臓が嫌な音を立て出し、力の限り叫んだ。
「ソイツは関係ないっ!やめろっ!!」
ドラコは目を瞑って何も見えなかったが、会話からして自分が狙われていることに気が付いた。
「ぼ、僕は純血だ!殺さないでくれっ!お願いだ!!」
シューシューと聞こえる音は、変わらず後ろから聞こえてきた。ドラコは今すぐにでもこの場所から逃げ出したい気持ちで一杯だった。命を握られているという恐怖が、ドラコをますます支配していった。
「殺しはしない。だけど、僕のことも、バジリスクのことも忘れてもらう必要がある。君たちはただ、そこで動かないでいたらいいんだ」
ジニーが歩み始めると、ミラは自分の落とした杖を探した。