第43章 秘密の部屋へ
杖はミラが腕をいっぱいに伸ばしても届かない距離に落ちているのを見つけたが、怪しい行動を見せれば、ジニーは容赦無く自分、またはドラコに魔法を使ってくるのは目に見えてわかった。
ただ芋虫のようにうずくまって、ドラコがやられるのを見ているだけで終わってしまうのか----もう終わりだ、とミラは諦めにも似た絶望を感じていた。
「…フィ、フィニート インカンターテム」
一瞬、暖かい光に包まれたような感覚がした。あれほど痛かった頭痛の痛みが、一瞬引いたのを感じると、ミラは転がっている杖に向かって手を伸ばした。杖はミラに引き寄せられるように、持ち主の手の中に戻ってきた。
そして、向かってくるジニーに向かって杖を向けた。ジニーは歩みを止め、目を見張るようにしてミラとドラコを見据えた----が、ミラは向けていた杖を静かに降ろした。
「----思ったより冷静だな」
「…殺されないって保証がどこにあるんだ、トム」
「余計なことをと思ったが、おかげで僕のことを思い出せたみたいだな」
ミラはギュッと杖を握り込んだ。
「さっさとして。時間がないんだろ」
悔しいが、今のミラにジニーもドラコも救えないということが、痛いほどわかった。ドラコが自分にかかっていた何かしらの呪いを解いてくれたことで、トム・リドルのことを思い出せた。
目の前にいるジニーに乗り移っているトムと、後ろにいる、目があっただけで即死してしまうバジリスクを相手に、今は手が出せない。
トムは目を瞑って震えているドラコの目の前にやって来ると、杖をこめかみに当てた。