第43章 秘密の部屋へ
ミラはイライラしていたのもあったが、『継承者』が残した廊下の角に差し掛かった時、確認もせずに踏み出した。特にこの廊下は人気がなく、授業の移動時にもあえて避けられているのを知っていた。
が、ミラは廊下の先に見えたものに足を止めた。そのまま角を曲がってきたドラコが、止まっているミラの背中に大きくぶつかった。
「わっ!」
「おい!こんなところで突然止まるな!」
人気がないせいで、ドラコの声は廊下によく響いた。ミラは後ろから押されてよろけたものの、目の前の光景に目が釘付けで動けなかった。ドラコも動かないミラの横から体を出すと、身体の芯から凍えるような光景を目にした。
よく知った、小柄な赤毛のロングヘアーは、まだミラとドラコがいると知っているのか、そうでないのかわからないが、『継承者』が残した最初の文字のすぐ下に、新たな文字を書き残していた。
『彼女の白骨は永遠に『秘密の部屋』に横たわるであろう』
「ジニー…?」
ミラの喉からは、掠れたような声が出た。文字を書き終わったであろうジニーが、顔を真っ青させて、片方にノートを持ってゆっくりと振り返った。生気のない目をしているジニーに、ミラはゾッとした。頭の中では、必死に警戒音が鳴り響くような、危険を知らせると同時に、そこまで痛くなかった頭痛がガンガンと石で叩かれるように痛み出した。
「まさか、君たちがここに来るなんて。それとも偶然か----でも、ミラ、君には用があったんだ。わざわざ呼ぶ手間が省けてよかった」
ジニーらしくない話し方に、身体中に鳥肌がたったミラは、無意識に杖を取り出した。
「君の魔法はもう僕には届かない」
と、トムが言うや否や、頭痛の痛みが頂点を達したように、ミラは持っていた杖を取り落として、その場に頭を抱えてうずくまった。何か、得体の知れないものが入り込むような感覚に、ミラは必死に争った。