第43章 秘密の部屋へ
ミラは怒りを沈めた。ハリーの言う通りだったからだ。まだ『継承者』はこの学校内にいて、次に誰を襲うかも予測できない。ハリーとロンの冒険を聞いて、羨ましがっている場合ではないと、ミラは今一度冷静になるように努めた。
「ロンもごめん。スネイプの罰則でイライラしてた」
「こんなこと言うのも変だけど、今回はスネイプの罰則の方が、僕は100倍マシだって言えるよ」
「じゃあ今度代わってよ」
「また蜘蛛を探すことがあったらね」
と、皮肉混じりに言ったロンに、ミラはプッと笑いを零した。しかし、ミラは困ったようにハリーを見た。
「でも、もうハグリットのヒント以外、何がある?」
「そのことで、アラゴクがトイレで無くなった女子生徒がいたって言ってた。もしその子が、今もそのトイレに居るとしたら?」
「もしかして----」
「『嘆きのマートル』さ!」
ロンが得意げに声をあげた。
「僕たち、あのトイレに何度も入ってたんだぜ。その間、マートルはたった個室三つしか離れていんかったんだ----あの時なら聞けたのに、今じゃなあ----」
と、ロンは悔しそうに呟いた時、部屋の扉がパッと開いた。
「君たち、何してるの?もうみんな並んで待ってるよ」
ネビルが不思議そうな顔で尋ねてきた。
「それに…ミラ、ここは男子部屋だけど…」
と、言いにくそうにミラに話しかけると、ミラは気にもしない様子でネビルに近付いた。
「私がここにいたら、何か不味いのか?」
「え…いや、そんなことはないけど…」
ネビルはミラの毅然とした態度にオドオドした様子で、困り果てている様だった。その様子を見たハリーとロンは、少しだけ理不尽だと思った。
「まさかとは思うけど、君たち、また危ないことなんて…」
「ペトリフィカス----」
ヒュッと、ミラは素早く杖を取り、ネビルの喉元に突き立てた。ネビルは声も出ないまま硬直し、今にも泣きそうな顔でミラを見た。目を細めていたミラは、数秒怯えた表情のネビルの顔を見たあと、すぐに杖を下ろし、パッと笑顔を見せた。