第40章 暗転
杖をドラコのこめかみに当てた。ドラコはグッと唇を噛み締めた。ミラは空いた方の手でドラコの顎に手を添えて上を向かせた。薄いグレーの瞳から、涙が溢れていた。悔し涙なのか、それとも悲しみの涙なのか、トムにはわからなかった。ただ優しく、木綿に包むように優しく話しかけた。
「苦痛は与えない。それに、君は数少ない純血の一族だしな。ただ、忘れるだけだ----オブリビエイト(忘れよ)」
ドラコから記憶を抜き取ると、ドラコの意識はぼんやりとした。ボーッとしているドラコの膝の上から立ち上がったトムは、散々な教室の中を見渡して、杖を一振りした。壊れた机と椅子は元通りに戻り、全てが散らかる前の状態になった。
数枚の紙がドラコの元へ宙を飛んで向かっているのを、トムは掴み取った。杖を当てると、手紙は散り散りに燃えて、跡形もなく無くなった。
「だいぶ魔力を使ったな----だが、体は限界か」
手で鼻血を拭うと、ベットリと手に赤い血がついた。
「もう少しだ----ここで終わられては困る」