第40章 暗転
ミラに無理させたことは明らかだった。
そしてまた、「行って」と、言って突き放そうとする。またドラコの中でモヤモヤする物が生まれた。
「なんで、お前の言うことばっかり聞かなきゃいけないんだ」
ドラコはミラを一度おろすと、杖を取り出して近くに転がっていた机を担架を変身させた。細心の注意を払いながら、ミラ抱えてその上に乗せた。担架に魔法をかけて運ぼうとした時、パチリとミラの目が開いた。
「ド…ラコ…」
「動くな、今医務室へ連れていく」
「…杖、わた、しの…」
ドラコはミラの杖が落ちていたのを見つけると、すぐにそれを拾ってミラの顔を一切見ずに手に握らせた。
「ほら、しっかり持て」
「…ありがとう、ドラコ----本当に君は、いい子だな」
気が付くと、上体を起こしたミラが抱きついてきた。突然のことで、ドラコとミラはそのまま後ろへ倒れ込んだ。咄嗟に後ろに腕をついたおかげで、背中まで打つことはなかったが、膝の上にミラが座り込んでいた。
スルリと冷たい手がドラコの右頬を撫でた。ゾクっと嫌な感じがしたドラコは、やっとミラを見た。薄い紫色の瞳----ではなく、どこかピンクがかっている色をしていた。
「----グローヴァー?」
ドラコが小さな声で呟くと、ミラは目を細めて笑みを深めた。
「やはり、見捨てることができなかったな。だが、そのおかげで簡単に捕まえれた」
ミラらしからぬ話し方に、ドラコはミラの肩に掴みかかった。
「痛い!ドラコ、痛いよ!」
「っ!!」
引き剥がそうとしたのに、ミラの悲痛な声でドラコはビクリと体を震わせ、掴んでいた肩を離してしまった。ミラはおかしそうにクスクス笑い、見下すようにドラコを見た。
「君のおかげだ、ドラコ。君が彼女に魔力を使わせてくれたおかげで、やっとこの体に入ることができた。何回か試してみたが、彼女は中々手強くてね」
「な、何を言って…」
ミラは笑みを深めて、ドラコの耳元に顔を近付けた。
「この女はお前には救えない、お前は無力だ」