第40章 暗転
ミラは防御呪文が破れないように手中しなければ、今にも押しつぶされそうだと感じた。しかし、このままでは自分も、そしてドラコもただでは済まないことはわかっていた。
「っ…ドラコ!頼む!動けっ!!このままじゃ…二人共やられる!」
「む、無理だ!こんなこと…殺さないでくれっ!!」
情けない声をあげるドラコに、ミラはどんどん重くなってくる机と椅子に集中しなくてはならなかった。ピシッと膜にヒビが入りだすと、ドラコはますます情けない声を出して、頭を抱えて座り込んでしまった。
「っ---もう…」
「嫌だ!死にたくないっ!!助けてくれ!!!」
一層ドラコの悲痛な声が聞こえ、ミラは杖に自分の魔力を込めた。
「ドラコ…っ、どうにかする、からっ……動けっ!!」
ミラは杖を大きく振った。防御呪文が解除され、机や椅子が一気に雪崩こむのをミラは手をかざして手中した。蝋燭を一つひとつ付けたり消したりして集中したように、自分たちに向かってきている机や椅子全てに集中した。
それでも数の多さに全てを抑えることはできず、確実に押しつぶそうとしてくるトムに、ミラは怒りが込み上げてきた。
「…っざけんな!!!」
ミラの怒りが爆発した。それを反動に、押し留めていた机と椅子が四方八方に飛び散った。もちろんそれはトムの方にも飛んでいったが、トムは難なく杖を軽くふってそれらをいなした。
「デパルソ!」
ミラはトムに向けて呪文を放つと、トムはバシっとその呪文をも最も簡単に弾き飛ばした。それでもミラは同じ呪文を叫び続けた。ミラの呪文が直撃しないよう、トムはミラの呪文を受け続けたが、段々と手が重たくなってくるのがわかった。
(何だ…手が重たく感じる…ただヤケクソにデパルソを使っているだけだと言うのに…)
トムは警戒した。何か別の呪文を唱えているのか、それともミラの背後で震えている役に立たないドラコが何かしたか----ドラコはさらに体を縮こませ、顔覆った手の指の隙間から覗いていた----自身もプロテゴを使うべきだろうかと考えた時、トムはニヤリと笑った。