第40章 暗転
「そろそろ呪文をかけ直さなければと思っていた所だったんが----まさかこんな形で解かれるとはね」
じっとりと嫌な汗をかいていた。一瞬でもジニーから目を離せば、生きて帰れる気がしないと、ミラはぎゅっと杖を握り込んだ。何とかしてこの教室から出なければと、色々考えてはみたものの、目の前にいるジニー、もといトムに勝てる算段が浮かばなかった。
「ペトリフィカストタルス!」
ミラは呪文を放つも、やはりトムに軽く杖で呪文を弾かれしまった。
「この体を傷付けたくないんだろうが、そんなことで僕に勝つつもりかい?」
「…だったら、ジニーの体から出ていけ。卑怯者」
薄ら笑いを浮かべていたトムは、突然真顔になると杖を一振りした。杖先から赤い光が飛び出すと、ミラは反射的に避けようとした----が、上衣の後ろがつっぱり、ドラコがミラのローブを強く握っていた。
「プロテゴっ!(守れ)」
薄い膜が二人を包み、トムの放った呪文が天井へ跳ね返ると、薄い膜は消えてしまった。
「おいっ!何して----」
ミラは激怒してドラコに振り返ると、ドラコはぎゅっと目を瞑って震えていた。震えが今頃になって服越しから伝わり、初めてドラコが動けないのだと気が付いた。急いでトムの方を見ると、杖を振っているのが見えた。
「プロテゴ!」
バチンと鋭い音がまた聞こえた。
「何処まで耐えられるかな、そんな足手まといを抱えて」
トムは杖を大きく振ると、教室にいくつもあった机や椅子が宙に浮いた。それをミラとドラコ目掛けて放つと、ミラは杖を構えて防御呪文を唱えた。薄い膜の向こうで、机や椅子が次々とぶつかり、そしてのしかかってきた。