第40章 暗転
「…状況が変わった」
「変わったって----私が『継承者』じゃ困るってこと?ドラコは知ってるだろ---私が…マグルを憎んでる事とか、フィルチの猫やフレッチリーが石になって清々してるって…『継承者』にピッタリじゃん!」
静かな教室に、ミラの声が響いた。
「仮に私が呪われたとして…呪いを解いたらアンタに呪いが移るとか、考えなかったのか?」
「----考えたさ」
ドラコは静かに呟いた。
「自分のやっていることに反吐が出そうさ…お前が僕には何もできないと思ってることにもだ」
「じゃあ、なんで…」
「分からないんだ!」
突然叫んだドラコに、ミラはびっくりして押し黙った。しかし、ドラコも何も話さないまま、ただ時間だけが過ぎた。ミラは何とかドラコの意思を読み取ろうと、ジッと見つめた。何か言いたげな顔をしていたが、言葉にすることができないでいるような----それとも、ドラコも何を言いたいのかわかっていないのか----。
「----信用しても、いいんだな?」
と、ミラが問いかけると、ドラコは目を見開いた。
「ああ」と、短い返事を返すと、ミラはドラコに向けていた杖を下ろした。
「フィニート インカンターテム」
ドラコが呪文終了の呪文を唱えると、ミラは一度身を固くしたが、体が吹き飛ぶことも、顔中に吹き出物が出ることもなかった。杖先から光が消えると、ミラはようやく息をすることができた。
「本当に呪文解除だったんだ…」
「当たり前だ」
ふん、とドラコを鼻を鳴らすと、杖を上衣の中にしまった。ミラは自分の手を見たり、変わったところがないか探してみたが、どこにも変わりはなかった。