第40章 暗転
「…日記はどうした」
「日記?なんのこと…?」
「---覚えてるか、日記のことを思い出そうとすると、酷い頭痛を起こしていた」
「何、言って……頭痛って…」
「お前はあの日記に関することを意図的に忘れさせられているんだ…呪われてる」
「…証拠があるのか?」
ミラはまだ信じられない気持ちでドラコを睨みつけていた。ドラコももどかしい気持ちでミラに杖を向けたまま、上衣のポケットに手を突っ込んだ。そして折り畳まれた数枚の紙を出すと、紙に書かれた内容がミラに見えるように突き出した。
「父に手紙を送った。五十年前の『リドルの日記』と関わった生徒を見かけたと----父はそれ以上関わるなと僕に警告する手紙を寄越した----その生徒の邪魔をしてはいけないと----関われば僕もただでは済まされない----何故ならお前が、秘密の部屋の『継承者』だからだ」
ミラは衝撃を受けた。ドラコが突き出した手紙には、ルシウスが書いたであろう手紙の内容がはっきりと見えていた。絶対に関わってはいけないと、何度も書かれていた。血の気がひく思いだった。確かに、フィルチの猫もフレッチリーも嫌いだったが、殺してやるとまでは思ったことはない。
「そんな…私が---『継承者』だなんて…違う、そんなはず---」
信じたくない気持ちでドラコを見ると、痛々しいものを見るような青白い顔をしたドラコと目が合った。本当に自分が秘密の部屋の『継承者』なのだろうか?もしかするとドラコとルシウスが一緒になって自分をはめようとしているのではと、疑いの気持ちが取れずにいた。
何故なら、こんなことドラコらしくないからだ。
いつものドラコなら、こんなことに絶対関わるはずがない。父親に反くようなこともしない。危険亜ことがあれば、一番に逃げ出そうとする奴だ----なのに。
「なんで…?」
衝撃と混乱で、頭の中はぐちゃぐちゃになり、ミラは顔を歪めた。
「----仮に、私が『継承者』だったとして…呪われてるんなら----どうしてそれをドラコが解こうとするんだ?『継承者』の助けをしたいって言ってたって聞いた」
「それは…」
今度はドラコが顔を歪める番だった。