第39章 明転
それから何日かすぎ、『姿なき声』の囁きも聞こえないと、ハリーは言った。すでにジャスティンと首無しニックが石にされて、もう四ヶ月が過ぎようとしていた。生徒たちは、もう『継承者』はいなくなってしまったのではないかと思っているような空気が流れていた。
ピーブスもやっと例の歌を歌うことに飽きてしまい、アーニー・マクミランはある日、薬草学の授業で丁寧にハリーに声をかけていた。もちろん、アーニーはミラにも声をかけようとしたが、ミラは気にらないと顔を顰めて、話しかけるチャンスを与えようとはしなかった。
それからも、大広間や廊下でドラコから視線をもらうたび、ミラは無視し続けた。視線は、ドラコからだけではなかった。ジニーからも度々心配の視線を送られたが、ミラはさっぱりわからなかった。
「なんか、ジニーに見られてる気がするんだけど」
「気にすることないよ。多分、まだ君とハリーが『継承者』だって噂されてるのを聞いて心配してるのさ」
「そう…?」
視線が合うと、ジニーはすぐに視線を外してどこかに行ってしまった。追いかけなければいけないような気がするのに、何故かそうすることはダメなのだと、誰かに命令されているように、ミラはシニーに問い詰めなかった。
そして三月になった。マンドレイクが何本か、第三号温室で騒がしいパーティを繰り広げていた。これに、スプラウト先生は大満足した様子だった。
マンドレイク薬が完成するまで、そう長くないようだ----。
春が近付いているのか、ホグワーツもだいぶ暖かい日差しが降り注ぐようになった。そのせいなのか、ミラは時々頭痛を感じるようになった。最近は寝不足にもなっていないはずなのに、何かに頭の中を触られているような、気持ち悪い感覚があった。