第38章 日記の行方
二月がやってきた。ジャスティンと首無しニックの事件以来、誰も襲われておらず、ホグワーツにわずかだが、明るいムードが漂い始めた。育てていたマンドレイクが情緒不安定で隠し事をするようになったことを、マダム・ポンフリーが嬉しそうに報告していた。
あの悍ましい悲鳴をあげていたマンドレイクが、一体どのようにして隠し事をするのだろうとミラは不思議に思った。急速に思春期に入るらしいが、あのしわくちゃの顔を思い出しても想像がつかなかった。
たまたまハリーと医務室の近くを歩いている時、マダム・ポンフリーがフィルチに優しく話しかけているのを耳にした。マンドレイクの収穫も、もうすぐそこまで来ているようだった。
「私が継承者なら、全部のマンドレイクを枯らして絶望にぶちこむよ」
「それはやりすぎだよ、ミラ…」
「またあの鬱陶しい猫が帰ってくると思うとね」
ミラは皮肉混じりに言った。
「多分だけど、流石の継承者もビビって逃げたんじゃないかな。学校中がこんなに神経を張り巡らせてるんだ」
「そりゃないね。向こうは隠れるのが得意みたいだし、このまま黙ってるとは思わない…」
「そうだね」と、ハリーは声を落として呟いた。誰も襲われないことに、少し気が抜けていたのかもしれないし、そうであって欲しいと願っていた。
明るい見方をしていないのは、ハッフルパフのアーニーもだった。未だにハリーが犯人だと確信していたし、ミラもハリーの仲間だと信じていた。ピーブスも状況を悪くする一方だった。みんなが大勢いる廊下に急に姿を表すと、「♪オー、ポッター、グローヴァー、嫌なやつらだー----」と、歌に合わせた振りをつけて踊っていた。
「ニックじゃなくて、アンタを石にすればよかった」
と、ミラは人が大勢いるにもかかわらず、宙で踊っているピーブスに向かって叫んだ。それまで喋っていたみんなは口を閉し、叫んだミラとハリー、ロン、ハーマイオニーから距離をとって口を閉した。
「おーやおや、これはこれは怖い!脅されたぞ!みんな、グローヴァーに石にされちゃうぞー!!!」