第38章 日記の行方
「うん、勉強になったと思う。ドラコたち純血一族にもちゃんと誇りがあって、理由があって蔑んでるんだって。歴史上、そういう思考になるのも仕方ないって思うこともある----実際、私のいる孤児院のマグルたちなんて、クズしかいないよ」
淡々とミラは話した。脳裏に孤児院のことを思い出したのか、スッと目が細まり影がさした。ドラコはミラが本当に孤児院のマグルたちをよく思っていないことを思い出した。
それは去年の禁じられた森の中で、ミラが感情的に怒った時に発したこと。自分を気にかける者が誰一人いなかった----ドラコには理解ができないものだった。家族からたくさんの愛を受けたドラコには想像もできなかったが、薄暗いランプの光で見えたミラの潤んだ瞳が、ドラコの心をギリギリと今も思い出すたびに締め付けられた。
「でも、あんなのと同じ血じゃなくてよかったって今なら思うよ」
「…!」
「私、マグル生まれじゃないらしいし。ま、こんな目してたら、マグルなんてありえないか」
自虐とも言える言い方だが、ドラコはミラの口から確かに「同じ血じゃなくてよかった」と聞いたことに、笑みを深めた。
「いいのか、そんなこと言って?グレンジャーが聞いたら泣くだろうよ」
「…ハーマイオニーは別だ」
ミラはドラコから顔を逸らした。
「ふん、いつまでそんなことが言えるか見ものだな」
シューシューと、今まで静かにしていた蛇がミラに向かって何かを発していた。ミラも蛇のことを見つめる姿に、ドラコは一瞬ヒヤリとした。決闘クラブでハリーと決闘した日、ハリーは蛇に蛇語で話はじめ、ミラはそんなハリーと蛇に臆すことなく話しかけていた。異常な光景だったと、今でも思った。
ミラもハリーもグリフィンドール生のはずなのに、あの日のあの二人はあまりにもスリザリンの要素がありすぎた。
そして、そんな二人に嫉妬もしていた。