第36章 這い寄る闇
「はい、これ。リクエストしてた本を持ってきたよ」
「ありがとう、ミラ」
黒い毛で顔が覆われ、頭には二つの長い三角耳、黄色い猫目のハーマイオニーが、ミラから本を受け取った。ポリジュース薬を飲んだあの日、ハーマイオニーが取ったと思ったミリセント・ブルストロードの髪の毛は、なんと猫の毛だった。
ポリジュース薬には動物の一部を入れてはいけないと注意書きまであったのに、トイレから姿を現したハーマイオニーは見事に尻尾まで生えた猫人間になっていた。マートルが今まで見たこともない笑顔で大笑いしていたのを、この時ミラは初めて見た。
幸い、マダム・ポンフリーはうるさく追求しない人だった。連れてきた当初は大層驚いた様子だったが、泣いているハーマイオニーに、マダム・ポンフリーは何も聞かず治療をしてくれた。治療には数週間かかるということで、ミラ、ハリー、ロンは時間を見つけては医務室に出向いていた。
ハーマイオニーが退屈しないように、ミラは図書室で借りた何冊かの本をハーマイオニーに届けに来ていた。あまり長居をすると、マダム・ポンフリーに追い出されるので、ミラは様子を見ながらギリギリまでハーマイオニーと何気ない話をしていた。
「おい、待てグローヴァー」
医務室の帰り、ぶっきらぼうな言い方で、ドラコが横の通路からミラの道を喘ぎるように前に出てきた。クラッブとゴイルは連れてきてないようだった。
「ああ、ドラコ。今日もいい天気----」
「お前、わかっていて僕が『継承者』じゃないと言ったんだろう----よくもやってくれたな」
怖い顔をしたドラコは、クリスマスの夜に起こったことを話しているのだと、ミラはすぐに気が付いた。なんとなく、ドラコが自分の前に現れるんじゃないかと予想していた。だからあえてハリーとロンとは行動をしていなかった。