第36章 這い寄る闇
「本当に紫色の目をしている…僕が在学中でも見たことがないな。その目に、特別な魔力でもこめられているのかな?くり抜いて調べてみようか?」
トムは興味深げにミラの目元に指を這わせた。
「フフ、嘘だ」と、冷たく自分を睨み付けているミラから指を離した。
「この日記が危険だと気付いて燃やそうとした時はヒヤッとさせられた。何せ君はジニーと違って勘がいい。迂闊に色々君に質問すれば、今夜みたいに気付いただろう----だが、今夜は君が汚らわしいマグルをどう思っているか確信した」
機嫌良さげなトムは杖を取り出し、ミラのこめかみに当てた。
「今夜のことは許そう、でもこのことを誰かに話されては困る」
ミラは首を横に振った。声も出せず、縛られて逃げることもできず、何をされるか分からない恐怖に自然と首が動いていた。恐怖の目で自分を見上げるミラに、トムは優しく微笑んだ。
「酷いことはしない。まずは君の『特別な』のスリザリン生から、純血がなんたるかを学ぶんだ。内容からして、ソイツが純血主義なのはわかっている。いい友達を持っているじゃないか」
ドラコのことだ!とわかった瞬間、巻き込んではいけないとミラは暴れた。ほぼ全身を縛っている縄のせいで、ミラは身動きらしい身動きもできなかったが、それでも何もせず、無抵抗生まではいられなkった。
「インペリオ(服従せよ)」
「っ…!」
トムが呪文を唱えると、痛みではなく、これまでに味わったことがない幸福感に包まれた。フワフワとした頭と体に、暴れていた体から力がどんどん抜けていくのがわかった。
(嫌だっ!!)
このままではドラコ、ジニー、そしてハリーたちにまで危害が及ぶと直感した。唯一動かせる首を左右に振り、トムの服従の呪文から抗おうとした。抗っているミラに、トムは笑みを深めて呪文をかけ続けた。
「怯えなくていい、受け入れるんだ。素直に受け入れれば、こんな苦しい思いなどしなくていい」
トムは優しくミラに囁いた。こみ上げてくる幸福感に、ミラはもうどうしていいかわからなくなった。ただこの気持ちを受け入れ辛く、頭の中では「嫌だ」と拒否し続けるが、体はもう言う事を聞いてくれないのか、ほとんど抵抗もできなくなっていた。