第36章 這い寄る闇
ない、とは言い切れなかった。少しでも『秘密の部屋』に関わりがあるのではないかと思われれば、周りの生徒たちが自分たちを異常者のようなものを見るような目で見られること。ハリーが蛇語を話せると分かれば、それはさらに加速した。自分もハリーも何もしていないのに----でも、ハーマイオニーやウィーズリー兄弟は違った。
『確かに、トムの言う通りだ。でも、私の友達はマグル生まれの魔女だけど、決して私たちが『継承者』じゃないって信じてくれている。私は彼女さえ守れたら、他はどうなったっていい』
『ミラ、僕は君に好感を持っているんだ。他はどうなってもいいと言い切る正直さ、力を追い求め、自分を苦しめたマグルに復讐することを望んでいる君を----本当にスリザリンじゃないのが勿体無いとさえ思う』
何を言っているんだ?と、ミラは急に寒気を覚えた。
『できれば、全てのマグルを恨んでほしかったのが----君にはもっと純血がなんであるかを学ばなければいけない』
危険だ!!!
ミラは勢いよく日記を閉めた。両の指先が氷のように冷たくなっていた。何故そうしたかは分からなかったが、ミラは本能的に危機を感じていた。
そして、トムにも不穏な空気を感じたからだった。ミラは日記を掴むと、暖炉のある談話室に慌てておりた。日記を燃やさなければいけないという、恐怖にも似た気持ちがミラをそうせた。
これ以上トム・リドルには関わってはいけない---直感が伝えていた。この日記が『秘密の部屋』の秘密を知っていたとしても、それ以上に危険だと思った。
「エクスペリアームス」
「うぁっ!」
それは突然だった。赤い閃光がミラの背後に直撃すると、手に持っていたリドルの日記は、ミラの手から吹き飛び、クルクルと回転しながらミラの後ろへ飛んでいった。ミラは吹き飛びはしなかったものの、その場に膝を突いて後ろを振り返った。