第36章 這い寄る闇
『五十年前もマグル生まれの生徒の一人が死んだって----何でもいいから『秘密の部屋』について教えてほしい』
『----ミラ、これ以上『秘密の部屋』に関わるのはやめた方がいい。あなたにまで何かあれば、ジニーが悲しむ。彼女は君と、もう一人ハリーという人物が『継承者』ではないのかと噂されて、心を痛めている。とても危険だ』
やはりトムは教える気はないと、ミラはわかってため息を吐いた。ミラは羽ペンをテーブルの上に置き、ぼんやりと開かれた日記を見つめていた。トムの気が変わって、教えてくれたらいいのになと思いながら見ていると、真っ白の日記に文字が浮かびだした。
ミラはトムが諦めて何か教えてくれるのだろうかと、期待して浮かんでくる文字に目を走らせた。
『君はマグルのことをどう考えている?』
一体どういうつもりの質問なのだろうかと、ミラは顔を顰めた。この質問は、『秘密の部屋』に関係があるのだろうか?
『別に、どうもしない。『秘密の部屋』に関係あるの?』
『質問を変えましょう。君を不当に扱う孤児院の院長は?』
ミス・メアリーのことを思い出すと、酷い呪いをかけてやりたい気持ちに駆られた。
『僕はマグルの父が嫌いだ。父のせいで母は死んだ』
ミラは前にトムが教えてくれたことを思い出していた。トムの父親はマグルであり、母親は魔女だということ。それだけしか知らなかったが、同じ孤児院暮らしというだけで、両親に何かしら問題があることは分かっていた。
孤児院にはそういった様々な問題を抱えた親が子供を預ける場所だ。
だからトムが自身の父親を恨んでいることに、ミラは驚きもしなかった。
『ミラ、君は知ってるだろう。マグルがどんなに卑しい存在か。不当に僕達魔法使いを扱い、虐げてきたか。ホグワーツに通っているマグル生まれもそうさ。奴らのせいで君たちを『継承者』と決め付け、排除しようとしているだろう?』
『そんなこと----』