第35章 クリスマスとポリジュース薬
ここ最近寝不足が続いているミラを、ハーマイオニーは心配していた。薬を処方してもらうべきだとも考えたが、授業もない休暇中の寝不足に、果たして先生は対応してくれるのだろうか。
それに、寝不足なことにミラが一番困ってなさそうなのがまた変だと感じていた。
モヤモヤする気持ちを抑えて、ハーマイオニーはクサカゲロウを上衣のポケットにねじ込み、ポリジュース薬を作っている三階の女子トイレへと向かった。
最後の材料、クサカゲロウを煎じ薬に混ぜ込むと、ポリジュース薬は本に書かれている通りの色へと変化した。ポリジュース薬が完成したのだ!ハーマイオニーはグリフィンドールの談話室までの帰り道、スキップしたいくらいの嬉しい気持ちで戻った。
談話室には、まだ誰もいなかった。部屋に戻ると、ミラはまだベッドの中でぐっすりと眠っていた。寝不足で起こすのは可哀想だと思い、ハーマイオニーはハリーとロンのクリスマスプレゼントを持って、静かに部屋を出た。
ミラが起きたのは、時計の針が十一時を回る頃だった。
「おそよう、みんな」
「メリークリスマス、ミラ。プレゼントが届いてるよ」
ハリーに自分のプレゼントだと思われる包みを見せられたミラは、眠たそうな顔からパッと覚醒したように目が冴えた。駆け足でクリスマスツリーの下を覗き込んでみると、ミラ以外のプレゼントは全てなく、みんな開けてしまっていたようだ。
「ハグリッドから糖蜜ヌガーが届いてるんだけど、寒いからカチカチで食べれなくて、暖炉のそばに置いてあるよ」
「ハグリットのヌガーはいつもカチカチじゃん」
「後で一緒に食べよう」とハリーに言われて、ミラは快く頷いた。
「メリークリスマス、ミラ。これ、私からよ」
「ありがとう、ハーマイオニー」
ハーマイオニーからは真っ黒の手袋だった。しっとりとした皮の肌触りが良く、シンプルなデザインだが上品であり、中はしっかりと暖かい。