第35章 クリスマスとポリジュース薬
『まずは蝋燭の炎を一つずつ付けたり、消したりから始めてみましょう。一気にするのではなく、一本ずつです。まずは君の集中力がどれほどのものか確かめる必要があります』
ミラは談話室にあった蝋燭を三つ見つけてテーブルに並べた。その蝋燭の一本を睨みつけるように見つめ続けた。----しかし、何も起こる気配がなかった。「付け!」と念じても、火のついていない蝋燭はうんともすんとも火が付かないままだった。ミラはショックだった、心のどこかで簡単だと侮っていたからだ。次第にイライラし始め、「付け!」と蝋燭に怒鳴ると、ボウッと蝋燭三つに炎が勢いよく点火し、ミラは驚いて勢いよく椅子と後ろにひっくり返った。
椅子が倒れたせいで、静かだった談話室に音が響いた。ミラは慌てて起き上がり、誰も部屋から出てこないか耳を澄ました。誰も部屋から出てくる様子はなく、ホッと息を吐いた。ふと談話室の時計を見ると、もう朝の四時を刺しそうな時間だった。
ミラは慌てて蝋燭を適当な場所に置き、日記に羽ペンを走らせた。
『ごめん、トム。もう朝だから寝ないと…蝋燭の訓練、思ったより難しくてやりがいがありそう』
『訓練した日は、僕に報告してくれませんか?何かアドバイスができるかも知れません』
『わかった。でも、毎日になるかもしれないけど、それでもいい?』
『勿論。僕も君の成長が楽しみです』
「おやすみ」と、最後に書き残すと、ミラは日記を閉じてこっそり部屋へと戻った。
・・・・・
とうとう学期が終わり、降り積もった雪と同じくらい深い静寂が白を包み込んだ。ほとんどの生徒が帰ったおかげで、ハリーは安らかな日々を過ごしていたし、ミラも蛇を肩から下ろして伸び伸びと過ごしていた。
蛇も誰もいないことをいいことに、暖炉の前で蟠を巻いてぐっすりと眠っていた。ロンはスキャバーズが食べられないか始終心配していたが、「そんな年老いたネズミ、食べても美味しくないってわかってるよ」とミラはロンに言ってやった。