第34章 決闘クラブと蛇
ミラも心配な気持ちでハリーを見た。どう見てもロックハート先生がハリーに教えているであろう呪文など、役に立ちそうにないからだ。そうこうしている内に、ロックハート先生が号令をかけた。
先に呪文を放ったのはドラコだった。
「サーペンソーティア(へび出よ)!」
ドラコの杖先が炸裂すると、その先から長くて黒い蛇が出てきて、ハリーはぎょっとした。蛇は二人の間の床に重い音を立てて落ち、鎌首をもたげて攻撃体勢をとった。周りの生徒が悲鳴を上げ、サーッと後退りする中、ミラは動かずにハリーを見守っていた。ハーマイオニーもミラの少し後ろに隠れたが、ミラだけがまるでそこにポツンと取り残されたように立っていた。
「動くな、ポッター。私が追い払ってやろう----」
と、スネイプ先生が悠然に言った。ハリーが身動きができず、怒った蛇と目を合わせて立ちすくんでいる光景を、スネイプ先生が楽しんでいると言うことが見てはっきりわかった。
「私にお任せあれ!」
と、そこへロックハート先生が叫んで、蛇に向かって杖を振り回した。バーンと大きな音がすると、蛇は消え去るどころか三メートルも宙を飛んで、大きな音を立ててまた床に落ちてきた。ミラはその蛇がロックハート先生のせいで、余計に怒っているように感じた。
蛇は怒り狂ってシューシューと鳴いていた。蛇はハリーからジャスティンに狙いを変更すると、ジャスティンに滑り寄り、再び鎌首をもたげて牙を剥き出しにした。
スネイプ先生が動き出す前に、ハリーが蛇に向かって歩き出した。そしてハリーから聞いたこともない言葉を話し出し、それはまるで蛇に語りかけているようにも見えた。
「…ハリー?」
ミラはハリーが何をやっているのか全く理解できなかったが、蛇から怒りが消え、もう誰にも攻撃しないような気がした。むしろは蛇は床に平たく丸くなって、従順にハリーを見上げているようだった。
ハリーがジャスティンを見てニッコリしたのを見て、ミラはハリーに駆け寄った。
「ハリー、凄い!今のは何?そんな隠し芸があったなら教えてよ」
ミラはハリーの肩を叩いて大はしゃぎした。しかし、周りにいた先生や生徒たちは、異常な光景を目の当たりにしたような目で二人を見ていた。