第33章 不測の事態
こんなことでドラコに頼み事など、ミラはしたくなかったが、背に腹は替えられなかった。ドラコはしばらくミラを観察したが、気まずそうに顔を俯かせ、本当に助けてほしいように見えた。
「いいのか?もっと酷くなるかもしれないぞ」
ドラコは気分が高揚してきたのがわかった。あまり人を頼っているところを見ないミラが、自分を頼っている。それもハリーではなく自分にと思うと、何故かハリーに勝ったとさえ思えた。
それでも素直に引き受けるなんてことはせず、ドラコは意地悪く笑って見せると、ミラは俯いていた顔を上げた。
「ドラコはそんなことしないよ」
お世辞も何も混ざっていない真っ直ぐなミラの瞳に、ドラコは慌てて目を逸らした。苦虫を噛み潰したような顔をしながら、「見せろ!」と、ミラの鍋の中身を見た。中身は確かにスネイプ先生が言っていたように、薄い色をしていた。
ドラコはしばらく考えたるような素振りを見せた。
「…直りそう?」
「こんな簡単な薬も作れないようじゃ、先が不安だな」
「何を間違ったんだろうなぁ…火加減とか?」
ジトリ、と怪しむような目を向けられて、ミラはヒヤリとしたが、ドラコはわざとらしい大きなため息を吐いて、しゃがみこんで火加減を確認した。ミラは咄嗟に目に入ったフグの目玉をハリーに投げつけると、それはハリーの頭に見事命中した。
ビックリしたハリーがミラを見たが、ミラは口パクで「ごめん!」と言った。ミラは目線を下に向けると、ドラコがミラの大鍋の火加減を見ていることに気が付き、ハリーは素早く自身の大鍋の影に体を隠し、ポケットからフレッドのフィリバスターの花火を取り出して、杖で突いた。
「おい、特に問題はないぞ」
と、火加減を見てくれたドラコが立ち上がろうとするのを、ミラは慌ててドラコの肩を掴んで無理矢理座らせた。
「本当!?」
「おい、なんだ!」
あと数秒なんとかドラコを座らせなければ、ハリーがやろうとしていることがバレてしまう。ハリーがフィリバスターの花火を点火させてしまったからには、何がなでもドラコを押さえ込まなければならなかった。