第33章 不測の事態
今日の授業『膨れ薬』を作ることだった。スネイプ先生は湯気の立ち登るクラス内を歩き回り、グリフィンドール生の作業に意地の悪い批判をしていた。それを聞いたスリザリン声の嘲笑う声が聞こえ、嫌な先生だとミラはつくづく思った。
隣の席のドラコは、スネイプ先生が見ていない瞬間を狙って、フグの目玉をハリーとロンに投げつけていた。しかし、二人が仕返ししようものなら、「不公平です」と抗議する隙も与えず、罰則を受けさせられることをドラコは知っていた。
たとえスネイプ先生がドラコのやっていることを見ても、ドラコはスネイプ先生のお気に入りなので、何も言われることはない。まさに不公平の極みだ。
ドラコが二人にちょっかいをかけようが、今のミラにはどうでもいいことだった。合図が出た瞬間、なんとかしてドラコの気をハリーから逸さなければならない。ハーマイオニーになんとかすると言った手前、作は一つも浮かんでこない。
手元に集中できないせいで、ミラの膨れ薬は教科書に書かれているより薄い色をしていた。ミラの鍋の中身を見たスネイプ先生が、薬が薄すぎると嘲笑ったが、そんなことはどうでもよかった。どうしたものかと、隣のドラコを横目で見た。
ハリーとロンにフグの目玉をぶつけたりしているのに、ドラコの膨れ薬は順調のようだった。スネイプ先生がドラコの膨れ薬を見た時、褒めていたのが聞こえていたからだ。そのままネビルを嘲りに行ったのを確認した時、ハーマイオニーの合図が見えた。
ミラは意を決してドラコの机まで歩いた。
「ドラコ」
酷く小さく、掠れた声だった。おかげで誰にも聞かれなかったが、ドラコだけには聞こえていた。
「なんだ」、とそっけなく返事を返されたが、作業の手を止めて応えてくれた。
「わ、私の膨れ薬がうまくいってなくて…ちょっと見てほしいんだけど…」
----なんて酷い作戦だろう…と、ミラは自分自身を殴りたくなった。もう当たって砕けろといった心境だが、ドラコをなんとかしなければ作戦は進まない。ここは無理にでも、自分を曲げてでもやるしかないのだと奮い立たせた。
「何故僕が?ポッターにでも聞いたらどうだ」
「そ、そうだけど…ドラコの方が得意なの知ってるから…お、お願い…」