第32章 ガールズトーク
「残念だったなぁ、ウィーズリー。あの時にサイン入り写真をもらっておけば、今頃お前も豪邸に住めたかもしれないぞ」
「豪邸なんて言っても、そんなに豪華なら空き部屋だらけなんだろう?君の友達も空っぽなのと同じようなものさ」
上手いぞ、とハリーはロンの方を叩いた。クラッブとゴイルは、ロンが何を言ったのか理解できず、お互い顔を見合わせていたが、ニヤニヤ笑っていたドラコから笑みが消えた。
「空き部屋はいつでも招けるために開けているんだ、ウィーズリー。空き部屋だらけかもしれないが、それはむしろプライバシーがあることを意味している。君にはその概念が理解できるかどうかだな。それに、君のような空き部屋がない家に、誰かを招く必要もないのかもしれないな」
バチバチと睨み合っているロンとドラコは、まるで二人の親のアーサーとルシウスを思わせる光景だとハリーは思った。
「二人とも、早く行きましょう。授業に遅れるわ」
ハリーとロンに追いついたハーマイオニーが、いざこざは散々だと言った様子で二人の上衣を引っ張った。しかし、男子たちは睨み合ったまま動こうとせず、先に目を逸らしたら負けだと言わんばかりに睨み合っていた。
「男の子って…ねぇ、ミラも手伝って…ミラ?」
呆れたハーマイオニーがミラに声をかけると、ミラはハリーとロン、ドラコの間に入った。ジッとドラコを見つめると、間に入ってきたミラを不快そうに見た。
「なんだ、グローヴァー」
「…」
ミラは何も答えず、ただジッとドラコを見続けた。一歩、二歩と歩いてドラコに距離を詰めると、半歩もしない距離でミラが黙ってドラコを見続けた。
「な、なんだよ…」
何も答えず、ジッと自分を見つめてくるミラに、ドラコは冷や汗やら緊張で声がうわずった。澄んだアメジストの瞳が、瞳の奥を見ているような気がした。真っ直ぐすぎる視線に、逃げるのは男らしくないと、プライドが邪魔してドラコは一歩も引けなかった。
黙って至近距離で見つめ合う二人を、ハリーとロンは口をぽかんと開けて見ていた。ハーマイオニーは口元に手を押さえて、緊張した面持ちで見守っていた。