第32章 ガールズトーク
「ごめんなさい、私あなたがそこまで悩んでるなんて思わなくて…」
「ハーマイオニーが謝ることじゃないよ」
ミラは上体を起こすと、もう一人入れる分のスペースを開けた。
「そんなところに立ってると、風邪ひくよ」
「すぐ戻るわ」
「フフ、すぐに終わりそうにないと思うけど」
悪戯に笑うミラに、ハーマイオニーは確かにと納得した。ミラに悩みを作ってしまったのは、他でもないハーマイオニーなのだから。ハーマイオニーは少し遠慮気味にミラのベッドに入ると、シングルベッドが少し窮屈に感じたが、二人が寝てもギリギリ大丈夫なくらいのスペースはあった。
「ハリーとロンが心配してたわ…でも、あなたがマルフォイのことで悩んでるなんて、二人には言えないわ」
「言ったら多分ハリーが変な心配しそうだもんなぁ」
万が一、ミラがマルフォイと仲良くしたいだなんてハリーの耳に入れば、ハリーの機嫌がどうなるかくらい、二人にはお見通しだった。
「でも、ハーマイオニーだっていい気はしないだろ。マルフォイがハーマイオニーに言ったことは許されないし、私も許してない」
「…正直、私は嫌よ。汚れた血だなんて言われて、心の底から嫌いだって思ったわ。それに、あなたにも酷いことたくさん言ったことも知ってるわ」
「私は別に捨て子とか言われても事実だし、そこまで気にしてない。酷いことなら私だってマルフォイに言ったことくらいあるよ、人間のクズとかね」
「それは本当のことだと思うわ」
ミラはフフフ、と笑いを漏らした。
「うん、私もそう思ってた」
ミラは肩まで伸びた髪の毛の毛先を弄るように触った。
「でも、髪の毛のことは気にしてたよ。髪の毛に呪文が当たった時なんか、ヤバい!って顔してた」
その時のことを思い出したせいで、ミラは口に手を当てて笑いを抑え込んだ。笑い事ではない事件だったが、本当にミラは髪が短くなったことは毛先のほども気にしていなかった。
「気にするところはそこじゃないって怒ったんだけどさ」
「じゃあ、あのブラシはマルフォイのからだったのね」
「…あ」
笑っていたミラはピタリと止まった。その様子を見たハーマイオニーは、ますます確信した。