第32章 ガールズトーク
もうすぐ十一月が終わりそうな最後の週の土曜日、薬作りにはミラとハーマイオニーだけが来ていた。ハリーはクィディッチの練習で席を外していた。ロンは変身術の課題がまだ終わらないと、朝食の後、図書館へ悪態をつきながら見送った。
二人は交代しながらポリジュース薬の鍋をかき混ぜた。
「どうしてマルフォイが『継承者』じゃないって、ミラは思うの?」
他愛もない会話をしていたのに、ハーマイオニーはやっと本題を切り出せたような顔をして言った。ハーマイオニーはここ最近、何かを尋ねたそうにうずうずしているのを、ミラはなんとなくわかっていた。
「ごめんなさい、こんな話、ハリーたちとすると気まずくなると思って」
「ううん、ハーマイオニーの言いたいことはわかるよ。気を使わせてごめん」
鍋をかき混ぜながらミラは呟いた。
「二人には黙っててほしい」と、ミラが言うと、ハーマイオニーは頷いた。
「実は…クリービーが石になる前に、私、マルフォイに会った----たまたま、マクゴナガル先生の部屋に向かう時だけど」
自分からドラコに会いに行ったとは言えなかったが、ハーマイオニーは少し驚いた様子を見せたが、黙って聴き続けた。
「これは私の勝手な考えだけど…マルフォイの様子からして、クリービーを襲うような感じはしなかった。落ち込んでたけど、別れ際に次は勝つって言われたよ。私には、むしゃくしゃしてクリービーを石にするような感じはなかった----だからって、マルフォイがやってないって言い切れないんだけど」
「そうね…ミラは…マルフォイのこと、どう思ってるの?少なからず、私たちより関わりがあるわ」
「どうって…」と、ミラはかき混ぜていた鍋の手を一度止めて、難しい顔をして考えた。
「クソ野郎だよ。人の嫌がることを平気で口にするし、偉そうに廊下を歩いてて馬鹿馬鹿しい。嫌な奴ってわかってるんだ…けど、助けてくれたこともある」
「それは----」
ハーマイオニーは咄嗟に口を閉じた。
「…あんなやつでも良心のカケラがちょっとあるんだって、知ったらなんか…」
また鍋をかき混ぜなら、複雑そうな顔をしているミラを見たハーマイオニーは、咄嗟に言いそうになった「それはあなただからよ」と、ハーマイオニーは言うべきか悩んだ。