第31章 狂ったブラッジャー
呆れているようにも見えたが、ミラはドラコが少しだけ元気になったような気がした。
「それよりお前は…」
ドラコはジッとミラの顔を見つめた。思い出すのは、ハリーに突撃していくブラッジャーに向かっていくミラが、なんらかの方法でブラッジャーを止め、最後は杖で粉々にしたところだ。
そして、崩れるように地面に倒れていくミラは死んだように動かず、ゾッとするような光景だった。
「どんな魔法を使った?魔法も当たってなかっただろう」
「それ、さっきも聞かれたけど、わからないんだってば」
「分からないだと?」
ドラコは疑わしげな目でミラを見たが、ミラは本当に分からないのだと説明した。ドラコは納得はしなかったが、魔法族の暮らしをあまり知らないミラのことを思えば、これ以上聞いても分からないだろうと思った。
「あまりいいものとは思えないな、程々にしておけよ」
「…つまり、それって…心配してるってこと?」
「は?」
ドラコは鳩が豆鉄砲を食ったよう顔をしていた。ミラもポカン、とドラコを見ていたが、自然と顔がニヤニヤするのを止めれず、手に口を当てた。
それでもドラコにはバレているのだが。
「だ、誰がお前みたいな野蛮な女なんかに!おい、笑うな!」
「フフッ」
胸にポカポカするような、温かい気持ちになった。怒っているように見えるが、照れているだけで、無理に笑いを止めようともしない。居心地悪そうにしていても、どこかにいく気配もない。なんとなく、ミラは何故ドラコを見限れないか、わかった気がした。
ハリーたちの前では本当に嫌なやつだが、なんだかんだドラコは助けてくれる。素直ではないが、トロールの時は先生に声をかけてくれたり、禁じられた森でもハグリッドのところまで、怖がっていた暗い森を走って呼びに行ってくれた。
「だって、ドラコって案外いい奴だから、フフフ」
「!」
何を言っているんだと、ドラコはミラを信じられない目で見ていたが、物事をはっきりと言うミラが嘘をついていると思えず、何も言い返せずにいた。しかし、そこに悪い気もしなくて、ドラコは腕を組んでそっぽを向いた。