第31章 狂ったブラッジャー
「私はただ、アイツならハリーの悔しい顔を見るなら、ブラッジャーより箒で勝った方がもっと効果的って思っただけ。マルフォイだって、それくらいのプライドはある…と思う」
そうであってくれと、ミラは内心思った。三人はまだ納得していなかったが、ミラもそれ以上話を伸ばそうとしなかった。どことなくぎこちない空気が漂っていると、医務室の扉が勢いよく開いた。泥だらけでびしょ濡れのグリフィンドール選手全員が、ハリーの見舞いにやってきた。
「よくやった、ハリー!」
ウッドはニコニコしながらハリーに言った。
「信じられないような飛び方だったぜ」
「腕が折れてるっていうのに、足だけで箒に捕まるなんてとんでもない奴だ」
双子のフレッドとジョージも興奮が治らないと言った様子で話し出した。
「おぉ、お姫様もお目覚めみたいで良かったよ」
「…」
ミラは口元を引き攣らせながら、フレッドを見た。
「ロックハート先生から助けてくれたってロンが言ってたんだけど」
「目の前でハリーの骨がなくなればな」
「ハリーは救えなかったが、君だけでも医務室に連れて来れて良かったぜ」
「ありがとう…でも、お姫様はやめて」
嫌そうな顔でミラが言うと、フレッドとジョージはクスクス笑っただけだった。前まではお嬢さんだったのに、自分はどうみてもお姫様という柄ではない。
「そういえばミラ、ブラッジャーを止めてたあれってなんだ?」
と、ジョージが不思議そうにミラの顔を見ながら聞いた。他のグリフィンドール生も気になっていたのか、視線を一気に向けられたミラは肩をすくめた。
「ロンにも聞かれたけど、よく覚えてなくて」
「鼻血出してぶっ倒れてたから、一瞬死んだのかと思ったぜ」
「ハリーも無茶するけど、ミラもよく無茶するよな」
「別に好きで無茶してるわけじゃ…」と、ミラは言葉を濁した。去年のトロールのこともあり、ミラは二人から顔を逸らした。
「そういえばさっき、フリントがマルフォイを怒鳴りつけてるの見たぜ。なんて言ってたかな…スニッチが自分の頭の上にあるのに気が付かなかったのか、とか。ガッカリしてたぜ、マルフォイのやつ」
「いい気味だぜ」
「…」