第31章 狂ったブラッジャー
ロックハート先生はとてつもなく大きな孔雀の羽ペンを取り出すと、紙に大きな丸文字でサインを書いた。ハーマイオニーは紙を受け取ると、紙を丸めてカバンに滑り込ませた。
ロックハート先生は、明日のクィディッチの試合でハリーに話しかけ始めた。自分もシーカーだったと話し始め、ハリーに個人練習が必要とあらば喜んで経験を伝授するなどと、頭が痛くなる会話に、ハリーは喉から曖昧な音を出していた。
ミラも顔を引き攣らせながら、四人はさっさと教室から飛び出した。
「信じられないよ。僕たちが何の本を借りるか、見もしなかったよ」
ハリーが呆れながら言った。
「そりゃ、アイツは能無しだもの」
「そのおかげで簡単に本が手に入るんだ、たまには役に立つってわかってよかったよ」
「能無しなんかじゃないわ。先生は私たちの勉強のために書いてくれたのよ」
ハーマイオニーはロンとミラに抗議した。
「君が学年で最優秀生だって、アイツがそう言ったからね…」
ロンはボソッと、聞こえるか聞こえないかぐらいの声で呟いた。
図書館に着くと、司書のマダム・ピンスに許可証を渡した。マダム・ピンスは疑わしげに許可証を確認すると、検査は無事に通過した。『最も強力な魔法薬』と言う本は、大きなカビ臭そうな本で、ハーマイオニーはそれをマダム・ピンスから受け取ると、大切にカバンに入れた。
四人はあまり慌てた歩き方に見えないように気を付けながら、嘆きのマートルのトイレに再び立て篭もった。マートルは四人を無視して、自分の小部屋でうるさく泣き喚いていたが、四人も無視して本を開いた。
たった数ページめくっただけで、身の毛もよだつような魔法薬がいくつも記載されていた。何故この本が『禁書』の棚行きなのか、四人は言葉にしなくてもわかった。気持ちが悪くなるような挿絵が描かれているせいもあるだろう----。
そして、『ポリジュース薬』と書かれたタイトルが見つかると、そこの描かれた挿絵も、とても痛そうに他人に変身していく絵があった。ミラは口が真一文字にしながら、一言も話さなかった。
「こんな複雑な魔法薬は、初めてお目にかかるわ」
「そりゃ、僕たちまだ二年目だもの」