第31章 狂ったブラッジャー
「ハリー、大きく吠えて----そう、そう----そしてですね、信じられないかもしれませんが、私は飛びかかった----」
闇の魔術に対する防衛術で、ロックハート先生の朗読会という名のつまらない授業だった。ピクシー妖精事件の後、ロックハート先生は教室に生物を全く持ち込まなくなった。きっとあれはいい教訓になったに違いないと、ミラは思った。
しかし今日ばかりは、ロックハート先生を上機嫌にしておかなければならない。ビンズ先生とはまた違ったつまらない授業でも、ミラはスッと背筋を伸ばして本を読んでいる振りをした。いつもは机に肘をついて、つまらない顔を晒しているが、今日だけの我慢を耐え忍んでいた。
ミラはまだよかった。大変なのはハリーの方で、今日はみんなの前でワーウルフ(狼男)の役をやらなければいけないからだ。
「----こうして、その村も、満月のたびにワーウルフに襲われる恐怖から救われ、私を永久に英雄として称えることになったわけです」
ちょうどそこで授業の鐘が鳴った。ロックハート先生は、宿題にワガワガのワーウルフが先生に敗北したことについての詩を書くことと伝えると、ミラは呪いの歌でも書いてやろうかと内心思った。
みんなが教室から出ていくのを確認しながら、四人は机に座っているロックハート先生に近付いた。ハーマイオニーが用紙を一枚しっかり握りしめ、その後にハリーとロン、ミラは一番後ろについていた。
「あの…ロックハート先生?私、あの----図書館からこの本を借りたいんです。参考にしたいんですけど、問題はこれが『禁書』の棚ので…先生のサインが必要なんです」
ハーマイオニーは口籠もりながら、紙をロックハート先生に渡した。
「先生の『グールとの散策』に出てくる、ゆっくり効く毒薬を理解するのに、きっと役に立つと思って…」
「ああ、あの本のね!私の一番のお気に入りのほんと言えるかも知れない。面白かったかい?」
「はい、先生」
にっこり笑いかけたロックハート先生に、ハーマイオニーは熱を込めて返事をした。ハーマイオニーはその本がいかに素晴らしいかを語っていたが、ロックハート先生がきちんとそれを聞いているかは疑わしいところだ。