第30章 名前のない関係
----それは、いったいどういう意味だ?
意味がわからず、言われた意味を考えていたら、グローヴァーは何を勘違いしたのか、殴り返していいと言い出した。
「……は?」
何なんだ、コイツは。
「何してるんだ」
「何って、やり返さないと気が済まないじゃん。大丈夫、慣れてるから」
「何言って…」
--慣れてるって、どう言うことだ? 得体の知れない何かに、ゾッと背筋が冷えた。
「----目を閉じろ」
僕がそう言えば、グローヴァーは素直に目を閉じた。普段もこれくらい素直だったら----いや、僕は何を考えているんだ。生憎だが、僕に女を殴る趣味はない。やり返さなかったのも、コイツが女だからで、決して喧嘩で勝てないからじゃない。
人差し指を親指に添えて力を込めて、無防備なアイツの額に当ててやった。予想通り、驚いて僕を見ている顔が滑稽だ。
「僕をそこらへんの奴らと一緒にするな」
ふざけた事しやがって…僕はお前らみたいな野蛮なグリフィンドールじゃない。
これ以上話すことはないと思い、僕は今度こそ背を向けて歩き出した。
「ドラコ!私、ハーマイオニーにも話してみるから!あと、今度のクィディッチ、がんばれ!」
馬鹿か、今度の試合はグリフィンドールとだぞ。敵の応援なんかして、コイツは本当にわかっているのか----それにコイツ、まだ汚れた血のことを諦めていないな。グレンジャーも素直に謝りに来るとは考えにくいが、精々無駄な足掻きでもしていろ。
「ああ」
見ていろ、今度の試合で僕がポッターより先にスニッチを取るところを。お前たちの悔しがる顔が待ち遠しいよ。