第30章 名前のない関係
「さ、さっさと要件を言え!それとも、シーカーの僕を潰して、今度の試合に勝つために呼んだのか?」
「ご、ごめん…来てくれると思ってなくて…」
色々思い出したのか、グローヴァーから笑顔が無くなった。
(僕が来て嬉しいみたいな顔をするな----クソッ)
心臓が一瞬むず痒い何かが走ったが、本当にグローヴァーは心臓に悪くて嫌な奴だ。だが、せっかく僕が来てやったとうのに、呼び出した張本人が何も話さない。アイツが落とした本の表紙が目に入り、いったいなんの本を読んでいるのだろうと見てみたら、ロックハートの本だった。
コイツもあのふざけた教師に熱をあげているのか?
「なんだ、僕をからかうために呼んだのか?僕は忙しんだ、そんなインチキ臭い奴の本を読んでいるようなお前と違って」
本当に馬鹿馬鹿しい。こんなことなら来るべきじゃなかった。
「二度と僕を名前を呼ぶな、馴れ馴れしい」
その馬鹿げた本を読むお前も、僕の父を侮辱するお前も、どれもこれも反吐が出る。
「ど、ドラ---待って!!!」
それなのに、僕の名前を呼びかけてやめたくせに、冷たい手が僕の右手を掴んで引っ張られた。冷たい手が、どれくらいここに居たか伝わってきて、余計に嫌気が差す。
「離せ、僕に触るな----」
「ごめん!!」
学校の裏庭など、誰が好き好んでくるだろうか。それももうすぐ夕食の時間だ。よっぽどの物好きしか来ない。真っ直ぐ僕を射抜くようなアメジストの目が、まるで「行くな」と言っているように、訴えているようだった。
(は?コイツ、今、なんて…?)
グローヴァーの言ったことが理解できなかったせいか、僕の体は完全に停止してしまった。
「殴って、ごめん…あの時カッとなっちゃって……それに、色々怒ってた、し…」
謝っている、グローヴァーが。
「それに、笑ってごめん…私、ドラコがお金の力でシーカーになったとか思ってない…あの時、そこまで考えてなくて…ハーマイオニーが酷いこと言って、ごめん…」
最初の威勢はどこへ行ったのか、後半はほとんど声が小さかった。なんでコイツが汚れた血のことで謝っているのか、全く意味がわからない。
それどころか、コイツはこんな意味のないことをするような奴だったのかと思うと、正直ガッカリだ。