第30章 名前のない関係
【ドラコ視点】
いつも通りの授業をこなし、最近はクィディッチの試合が近いからか、練習の量も増えた。しかし、そんなことは何一つこの僕には問題がない。課題はきちんとこなしているし、新しい箒は思い通りに飛行できている。
あとはポッターの奴をクィディッチの試合で、完全に負かすことだ。
あのスクイブの猫が石化したここと、壁に書かれた警告文のおかげか、最近はマグル生まれの生徒が怖がっている様子が見て取れて心底面白いと思った。父上は僕が目立たないよう、スリザリンの継承者に好きなようにさせておけと言われたが、正体くらい教えてくれてもいいのに----。
この学校内に、今も『継承者』が潜んでいる----いったい誰だ、わかれば手伝ってやるのに。
それなのにポッターかグローヴァーが『継承者』じゃないかと頭の悪い噂をチラホラと最近聞く。
チラッとグリフィンドールのテーブルを探していると、すぐにボサボサ頭のポッターを見つけた。隣には貧乏のウィーズリー。向かいには汚れた血のグレンジャーに、捨て子のグローヴァー。何やら楽しそうに四人で馬鹿馬鹿しく話しているようだ。
そこへちょうど、フクロウ便が届く時間になり、窓から一斉に梟が飛んできた。見慣れたワシミミズクが、何か小包を持って僕の元へやってきた。小包を落としていくと、さっさと群れの中に混じり、外へ出て行ってしまった。
「母上からか」
僕が小包を開けていると、その上に、ポトリと手紙が落とされた。僕はそれを手に取って見てみたが、僕宛の名前しか書いていなかった。誰だろうかと周りを見回したが、自分を見ている者はいなかった。
その手紙をよく見ると、見覚えのある字だったが、いったいどこで見た字だったっけ…。
「またお母様からの差し入れ?」
空いていた隣に、パンジー・パーキンソンが座って話しかけてきた。
「ああ、今度は名店のクッキーを送ってくれた。食べるか?」
「いいの?じゃあ一枚いただくわ!」
僕はパーキンソンに怪しまれないよう、手紙を上衣のポケットに仕舞った。小包の紙をとり、箱を開けてパーキンソンに渡してやると、パーキンソンは嬉しそうな声をあげて、どれを食べようかと悩んでいた。