第29章 継承者
「ハリーの両親を殺した奴の寮に入りたくなかっただけだよ」
ミラはキッパリ言った。
「ミラ…」
「スリザリンに行かなくたって、大切なものは自分で見つければいい」
「ミラのそう言うところ、私好きよ」
「ありがとう、ハーマイオニー」
ミラはハリーを見ると、ハリーは少し困ったような顔をしていることに気が付いた。
「やあ、ハリー!」
「やあ、コリン」
ハリーは無意識でコリンに返事を返した。人並みに流されて行く途中、コリンが傍を通った。ミラは迷惑そうな顔をコリンに向けたが、コリンは全く気が付いていなかった。
「ハリー、ハリー、ぼくのクラスの子が言ってたんだけど、君って----あとでね、ハリー!」
しかし、コリンは小さすぎて人波にのまれ、大広間の方に流れてしまった。
「クラスの子があなたのこと、なんて言ってたのかしら?」
「どうせ僕がスリザリンの継承者だとか言ってたんだろ」
ハリーは何故ジャスティンが自分から逃げていったのを理解した。数日前のミセス・ノリスの件と、『秘密の部屋』にいる怪物がマグルを狙っているとわかれば、真っ先に疑われるのはハリーだ。
「ここの連中ときたら、なんでも信じ込むんだから」
「ハリーのこと、よくも知りもしない癖に」
ミラとロンは吐き捨てるように言った。混雑もひと段落して、四人は次の階段を楽に上がることができた。
「『秘密の部屋』があるって、本当にそう思う?」
「わからないけど----ダンブルドア校長がミセス・ノリスを治せなかったこと、私考えてたんだけど、猫を襲ったのは、もしかしたら----うーん----人間じゃないかもしれない」
ロンがハーマイオニーに問いかけると、ハーマイオニーは顔を顰めながら答えた。
「じゃあ、壁に文字を書いた奴とは別の何かがいるってこと?」
「多分…ミラもどんな魔術を使ってるか、気になってたでしょ」
ミラとハーマイオニーが頭を悩ませて意見を交換し合っていると、ちょうど角を曲がったとき、あの事件があった廊下の端に場所に来ていた。