第29章 継承者
「ハーマイオニー、お願いだ、君の作文を見せてくれ」
「ダメ、見せられない。提出まで、十日もあったじゃない」
ハーマイオニーは厳しくロンに言った。
「じゃあミラ…」
「さっき参考にしたらいい本進めたじゃん」
「あとたったの二インチなんだよ…」
縋るような目でミラを見るロンに、ミラはため息をついて、カバンから宿題を取り出そうとした。
「ダメよ、ミラ!ロンのためにならないわ!」
「そうだねぇ…ってことでロン、自分で頑張れ」
ミラはチロっと舌を出し、カバンを締め直した。
「そんなぁ!ミラ、さっきのわざとだろ!」
「図書館ではお静かに」
ヒヒヒ、とミラは悪戯が完了したと笑いを溢した。
授業を知らせる鐘が鳴ると、四人は魔法史の授業に向かった。ミラとハーマイオニーを先頭に、ハリーとロンが後をついて行った。
「君って性格悪いよな、本当に」
「宿題をやらないロニー坊やが悪いのさ」
ロンはギリギリと歯軋りしてミラの頭を睨み付けた。まるで頭を焦がさんばかりに睨んでいるのに、ミラはどこ吹く風だ。
魔法史の教室に着くと、ミラ、ハーマイオニー、ロン、ハリーの順に席についてしばらくすると、黒板からビンズ先生が通り抜けてきた。ビンズ先生の授業は恐ろしく退屈であり、ハーマイオニー以外はほとんど眠っているか、暇つぶしに何かこっそりやってるかのどっちかだ。
ビンズ先生はこのホグワーツで唯一のゴーストの先生だった。聞くところによると、自分が死んだことさえ気付かなかったらしい。
今日も退屈な授業が始まり、ビンズ先生が読み上げる魔法史の話がまるで催眠術のように、意識がボーッとしてくる。ミラもノートを取る間だけは目を覚まし、またフワフワする睡魔に襲われる。