第28章 異変
「猫を殺したのは、呪いに違いありません----多分『異形変身拷問』の呪いでしょう。何度も見たことがありますよ。私がその場に居合わせなかったのは、まことに残念。 猫を救う、ぴったりの反対呪文を知っていましたのに----」
ミラは『異形変身拷問』という言葉に、ピクッと反応した。
しかしロックハート先生の意見も、涙も枯れたフィルチの激しいしゃくりをあげる声で中断されてしまった。机の脇の椅子にガックリと座り込み、手で顔を覆ったまま、ミセス・ノリスをまともにみることができない様子だった。
ミラはいい君だ、と大嫌いなフィルチの姿に、鼻を鳴らした。
ダンブルドア校長が、何かブツブツと不思議な言葉を呟いたり、杖で軽く叩いたが、何も起こることはなかった。
「アーガス、君の猫は死んではおらんよ」
「死んでない?」
フィルチは声を詰まらせ、指の間からミセス・ノリスの覗き見した。ずっと自信の自伝を話していたロックハート先生も、慌てて口を閉じた。
「それじゃ、どうしてこんなに固まって、冷たくなって?」
「石になっただけじゃ」
「おぉ!私もそう思っていたところです!」と、ロックハート先生が言った。
「ただし、どうしてそうなったのか、私には答えられん----」
「アイツらに聞いてくれ!血塗れだ!」
フィルチはハリーとミラを指さした。ミラはまた冷たくフィルチを睨み付けた。
「二年生に、こんなことできるはずはない。最も高度な闇の魔術を持ってして、はじめて----」
「アイツらがやったんだ!アイツらだ!」
しっかりとダンブルドア校長が言う中、フィルチはそれを遮って吐き出すように言った。
「アイツは顔が血塗れだ----それにアイツは見たんだ----私の事務室で----知ってるんだ----わ、私が----私がスクイブだと知ってるんだ!」
顔を苦しげに歪め、やっとのことで言葉を言い終えた。
「僕もミラも、ミセス・ノリスには指一本触れていません!」
ハリーは大声で言った。
「それに、僕、スクイブが何なのかも知りません」
「バカな!アイツは『クイックスペル』から来た手紙を見やがった!」